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裏メニュー「ハヤシライス」が一番人気。フランス料理老舗店の歴史

―[スゴいぞ町洋食]―
街角にひっそりと佇む昔ながらの洋食店。どんな街にも当たり前のようにある光景が、今、少しずつ姿を消しつつある。そんな町洋食の語り尽くせない本当のスゴさに迫る――。

フランス料理のタイムカプセルのような老舗

町洋食

フランス料理の文字をなくしたという店先の看板。フランス料理店を掲げていた名残は、奥の路地側にある看板で確かめることができる

 洋食のルーツはフランス料理である。いまでこそ「洋レトロで気軽で庶民的な料理の一ジャンル」としてフランス料理とは明確に区別されるが、明治、大正、そして少なくとも戦後からしばらくまではそれは「西洋料理」とも呼ばれ、また「フランス料理」ともほぼ同義であった。  だから、現時点で50年以上の歴史を持つ洋食屋のなかには、「フランス料理」を標榜していた店が少なくない。今回ご紹介する「グリルエフ」もそんな洋食店の一つである。  フランス料理というものは伝統を大事にする一方で、時代と共にその姿を大きく変え続けている料理体系でもある。  例えばかつては花形であった「デミグラスソース」は現代フランス料理ではまず正面立って使われることはない。一説によるとそれはあまりにもおいしく完璧すぎて、ややもすると料理がすべてそこに収束してしまうという理由で、ある時期からフランス料理界は一斉にそれを手放したとも聞く。それはそれですさまじい矜恃ではあるが同時にもったいない話でもある。  そんなデミグラスソースだが、日本の洋食界では昔もいまも常に主役。洋食というものは、つまり100年前のフランス料理をいまに伝えるタイムカプセルでもあるのだ。

流麗な筆記体のフランス語と日本語が併記されたメニュー

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稲田さんを驚愕させたグリルエフの店内メニュー。メニュー部分の文字は、先代の斎藤シェフが書いたものを現在も使用している

 私が初めてこのグリルエフを訪れたのは数年前、「ハヤシライスが抜群においしい洋食屋が五反田にある」という噂を耳にしてのことだった。  しかし、店に入りメニュー表を渡された瞬間、私は「これはハヤシライスを食べている場合ではないのでは」と心が揺らいだ。そのメニュー表は、流麗な筆記体のフランス語と日本語が併記された、あえて軽薄に言うなら「最高におしゃれでかっこいい」ものだった。  もちろん見た目だけではなくその内容も圧巻。まさに100年前、フランス料理の父とも呼ばれるエスコフィエの時代の古典ラインナップがそこにはずらりと並んでいたのである。私はすぐさま方針を転換し、仔牛の料理とチキンのサラダをワインと共に注文してゆっくりとそれらを堪能した。  もっとも、その後には結局しっかりとハヤシライスも追加注文し、胃も心も途方もなく満たされた状態で店を後にしたのだが。
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フランス料理店として1950年に創業
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グリルエフ
東京都品川区東五反田1-13-9
ランチ11時~14時30分(ラストオーダー14時)、ディナー17~21時(ラストオーダー20時40分)、日曜祝祭日定休
昭和25年創業の老舗洋食店。レンガ造りの外観や入り口の内装なども創業当時のままだという
(コロナの影響により営業時間はお店にご確認ください)

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