更新日:2021年02月11日 17:44
ライフ

50年前、ハンバーグはご馳走だった。受け継がれる味と思い

―[スゴいぞ町洋食]―
街角にひっそりと佇む昔ながらの洋食店。どんな街にも当たり前のようにある光景が、今。少しずつ姿を消しつつある。そんな町洋食の語り尽くせない本当のスゴさに迫る――。

親しみやすく品格も感じられる洋食店の歴史

スゴいぞ町洋食

カウンターだけの店内。着席すると紙ナプキンが敷かれ、ナイフとフォークが置かれる

 今なおハンバーグ530円の価格を守る、高円寺の「ニューバーグ」を前回に続き紹介する。ここの50年を超える歴史は少し複雑だ。  創業当時は別の人が経営していた。庶民にとってまだ高嶺の花だった「ナイフとフォークで食べる洋食」を大衆食堂並みの安い価格で提供したニューバーグ。店は評判を呼び、最盛期は7店舗もあったそうだ。  ところが、ファミリーレストランなどの台頭で「気軽な洋食」はここだけではなくなった。一軒、また一軒と支店が閉店するなか、高円寺店を買い取ったのが平井誠さん。現在、店を切り盛りする平井誠一さん・仁さん兄弟のお父上だ。ニューバーグは平井家には思い入れのある店だった。 「ハンバーグなんてご馳走、当時は滅多に食べられなかったよね。それを使い慣れないナイフとフォークで気取って食べるのが嬉しくて抜群においしくてさ」(仁さん)

先代がニューバーグを買い取ったワケ

スゴいぞ町洋食

一時は惣菜の注文をこなしきれないほどだった工場を、仕込みをする工場へと転換(写真左側)。このシステムを説明するために見せてくれた紙

 ただ先代がニューバーグを買い取った理由は、客として通った店に対する思い入れだけではない。  当時、平井家は今のお店がある場所の近くに小さな惣菜工場を構えて、ポテトサラダやマカロニサラダなどを市場に卸していた。しかし、大手メーカーが全国に販路を広げるなか、売り上げを減らす。そこでハンバーグなどの仕込みを行えば薄利多売の店も効率的に運営できるというのが、経営判断だった。
スゴいぞ町洋食

前身の惣菜工場のルーツが残るポテトサラダもついたミニサラダ(100円)。ポテトサラダ自体も200円でメニューに掲載されている

 そして現在、その工場で仕込みを一手に引き受ける実質上の「シェフ」である誠一さん。誠一さんは、製粉会社勤務を経て、’90年に惣菜工場から洋食屋のキッチンに生まれ変わったそこの仕事を父親から引き継いだ。その1年前には弟の仁さんもお店の現場に入っており、以来二人三脚でお店を運営していく。  製粉会社は食品関連だが、料理人としての修業を経たわけでもない誠一さんは「思い返すと運も良かった」と言う。
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50年以上受け継がれる「メキシカンソース」
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関東・東海圏を中心に和食店、ビストロ、インド料理など幅広いジャンルの飲食店26店舗を経営する円相フードサービス専務取締役。自身は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に業態や店舗プロデュースを手がける

飲食店の本当にスゴい人々

料理や飲食店の内側にある本当の姿を解き明かす!


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ニューバーグ
東京都杉並区高円寺北3-1-14
11~22時(ラストオーダー21時45分)無休、(緊急事態宣言中は11~20時/ラストオーダー19時45分)
昔ながらの製法で作られたハンバーグを、安価な値段で提供し続けてくれているサラリーマンにはありがたいお店

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