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「駅前食堂」を引継ぐ洋食店。50年以上の歴史を支えるメニューと味付け

―[スゴいぞ町洋食]―
街角にひっそりと佇む昔ながらの洋食店。どんな街にも当たり前のようにある光景が、今、少しずつ姿を消しつつある。そんな町洋食の語り尽くせない本当のスゴさに迫る――。

柔軟に変化し続け、愛される味を作った親子たちの系譜

町洋食

焼肉と並ぶ原点のメニュー「ジャンボ焼」。豆腐でボリューム感を演出し、見た目もインパクト十分。キュウリが清涼感をプラスしている

 戦後の復興期から高度経済成長が始まる頃にかけて都市部を中心に隆盛を誇った飲食店の業態に「駅前食堂」があった。  和洋中のメニューを揃え幅広い客層のニーズに応える大規模な大衆レストランで、ファミリーレストランの日本版プロトタイプといったところだろうか。かつてデパートにあった大食堂の、より大衆的な路面店版のようなものをイメージしてもいいのかもしれない。  池袋にあったキンカ堂食堂は、その代表的な一つであった。もっともキンカ堂は衣料デパートだったので、デパート内大食堂と位置づけられるのかもしれない。  ともあれ、大型大衆食堂はその後ファミレスやファストフードなどに押され次々と閉店していくことになる。一時は栄華を誇ったキンカ堂食堂とて例外ではなかった。  キンカ堂食堂の解散後、取締役であった稲田義治さんが、洋食部門のシェフ中野政夫さんらとともに’69年に立ち上げたのが、現在、東京都豊島区を中心に4店舗を構える洋食店「キッチンABC」である。  今、社長は稲田義治さんの息子・義雄さんに、統括店長兼総料理長は初代シェフ中野政夫さんの息子・正之さんに引き継がれ、親子2代にわたる強力なタッグチームがキッチンABCの核となっている。

オリジナリティ溢れるメニューと、インパクト満点の味つけ

町洋食

創業時の定番「焼肉」をはじめ、洋食の定番「ハンバーグ」など幅広いメニューが並ぶ

 そして、「オリエンタルライス」「インディアンライス」といったオリジナリティ溢れるメニューと、インパクト満点の味つけがキッチンABCの持ち味だ。  その原点は「焼肉」と「ジャンボ焼」にあると正之さんは言い切る。どちらもキンカ堂食堂で大評判だった味を引き継いだ伝統のメニューだ。  焼肉は豚バラ肉を炒め独特の甘辛いタレで味つけしたもの。ジャンボ焼は豚肉に豆腐も加え、そのタレをベースに仕上げたものだ。  タレは醬油と砂糖をベースに味噌やケチャップ、生姜などを合わせて作られる。人懐っこくキャッチーな味わいで、これはABCの全ての料理に共通するがとにかく飯が進む。 「洋食」というよりは、少しくだけた「お惣菜」的な味わいで、戦後の駅前食堂における洋食の大衆化がどのようなものであったか想像をかき立てられる。
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名物料理「オリエンタルライス」と「インディアンライス」
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関東・東海圏を中心に和食店、ビストロ、インド料理など幅広いジャンルの飲食店26店舗を経営する円相フードサービス専務取締役。自身は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に業態や店舗プロデュースを手がける

飲食店の本当にスゴい人々

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キッチンABC西池袋店
東京都豊島区西池袋3-26-1
ランチ11~16時(ラストオーダー15時30分)、ディナー17~22時(ラストオーダー21時30分)、年末年始定休
取材した西池袋店の他に東池袋店、南大塚店、江古田店がある
(コロナの影響により営業時間はお店にご確認ください)

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