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<純烈物語>純烈の原動力は「夢と表裏一体の欲」<第80回>

山本マネジャーを松下由樹が演じる凄さ

 まったくピッタリだったら、松下由樹さんが山本浩光をやれないでしょ。こんな素敵な変わり方ってあります? 山本さんが、松下由樹さんになっているんですよ。松下さんが出てくれたから、皆さんがテレビで見る絵の中に純烈がいるとなった。テレビ感がちゃんと出る。松下由樹が川越湯遊ランド(ロケ場所)にいるよ!って思ったもんね。だから最初、見とれちゃいました」  身長194cmの進撃の巨人を女性マネジャーにチェンジするというキャスティングは、テレビで描くドラマとして成立させる魔法だった。子どもの頃から観察癖が抜けない酒井は、リングサイド最前列よりもさらに近い距離で目撃できる松下の芝居に見入ってしまった。  完ぺきに演じきるものだから、もう一度見たくなりわざと自分がNGを出そうかと考えてしまったほどで、単純に松下由樹という女優の芝居が「早くて深くてすごくて、楽しく思えた」。だから本当ならば、自分は役者には向いていないのだと酒井は言う。 「なんでも俯かんして見てしまう。カメラマンも見ちゃうし、その向こうにいる関口さんも見ちゃう。全部を楽しみたいとなっちゃうからお芝居の割合がそこそこなんですよ。俺は歌の方が向いているんですね。歌は口さえ動かして音を出していれば、どこを見てもいいんだもん。お芝居は制限があって、本当は裏を見たいって思うことがあるもんね。演じたいという感覚よりも、そっちの方が上回りますね」  こうした刺激を味わいつつ4話分を撮り終えると、頭をもたげてきたのは欲だった。それは、得意の妄想から生成される。

いつかは『踊る大捜査線』のように……

 ネット配信番組が実現したら、次は地上波がいい。いつか踊る大捜査線のようになって、そこに織田裕二は出てくれないか、ギバちゃん(柳葉敏郎)に逮捕されてみたい、次はどのブリッジを封鎖するか……温泉の湧き湯のごとくほとばしり、勝手に足が前へ出る。  同時に、またこのスタッフで撮ってみたい、関口さんとまだ何作も作りたいとの願望が芽生える。何よりも、次に見えたものへ向かっていけばみんなが喜んでくれる。だからチャレンジしようとなる。 「僕らも二十代の頃は活躍できなくても、数は少ないながら欲があった。この世界に入りたくて小さい頃に入って、すごい人だらけで逃げちゃったけど、それ以上にやっぱり俺の好きな世界ってすごい人だらけじゃん!ってなって結果、今も続いている。だから常にそのカテゴリーの一番下っ端でいたいんです。なるべく下っ端で頑張って、いざいくぞ!っていう時はそのカテゴリーを卒業して次のカテゴリーの一番下に入るのを心がけている。  そうすると、こんなにすごいの!? こんなに巧いの!? こんなにパワーがあってこんなに寝ないの!?という考えられない人たちにどんどん会えて、いつの間にか自分もそういう人間に育っていってまた次のカテゴリーにいく。そういう感覚が純烈はある。常に誰かしら上がいる方がいいんですよ」

口角泡を飛ばし3時間しゃべりまくる明石家さんまと対峙して

 昨年12月『第8回明石家紅白!』に出演した時、多くの出演者を相手に口の周りを泡だらけとしながら3時間喋りまくり、番組を回す明石家さんまの姿を目にした酒井は涙が出そうになったという。「この人は、これを40年やり続けてきているのか……俺、そんな世界で生きてきて本当によかった。そして、まだこの世界でやりたい」と心の底から思えた。  松下由樹も、明石家さんまと同じく頭が回りすぎるから芝居が「早い」。そこで学んだものは、どこかで生かしたい。 「関口さんの頭の中には、何部作かあるはずです。続編、あると思います。それが純烈ものがたりなのか新しいドラマなのかはわからないけど、純烈+関口さん+FODの世界観という意味で、希望を持っていいと思います」(この項終わり) 撮影/ヤナガワゴーッ!
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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