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<純烈物語>「漢字一文字で表すと“嘘”と“恥”」リーダー酒井一圭が吐露したコロナ禍の2020年<第78回>

<第78回>2020年を漢字一文字で表すと“嘘”と“恥”。酒井一圭が吐露したコロナ禍における内面

 公式YouTubeへアップされたように、純烈にとって3度目の紅白歌合戦出場の報は、とても地味なシチュエーションで訪れた。1度目は初ということでカメラがまわる芸能界らしい華々しさ、2度目は公演中にファンと喜びを分かち合い、わっしょいわっしょいのドンチャン騒ぎに。  そして3度目は酒井一圭がハウススタジオへ向かう道をテクテク歩く中、クラウンレコード・純烈担当の新宮崇志によってなんの高揚もない会話の中であっさり告げられた。もっとも、これは動画収録ヴァージョン。じっさいのところはその日の午前中に、マネジャーの山本浩光から電話があった。 「あの日はメンバーが一人ずつ1時間半ぐらいズレて入る日で、僕が最後だったんです。昼1時ぐらいの入りで準備していたら、山本さんから電話がかかってきて『リーダー、おめでとう。それでさ、今から早めに出られる?』って。『ちょっと待て。今のおめでとうは何よ?』『いや、紅白決まった話。それでさ、12時にはNHKのホームページで発表になるから、それまでに入ってもらって報告するところを撮りたいんだけど』。 あとの3人はまだ聞いていないっていうんで、俺は事情を説明するため早めに聞いちゃったということなんだけど、それでいってみたら新宮さんがあの道路にいる状態になっていた。それが『道?』につながるわけ」

3度目の紅白決定の報は驚くほど地味だった

 20年、19年は恥ずかしいぐらいに大泣きした山本も、今年は「本来はおめでとうのための電話なのが、早めに来てという用件を伝える電話に付随してのおめでとう」。さらには同じく泣き担当の新宮も、ニヤニヤしながらカメラを構えている。  たまたまスタジオの外へ出てきた後上翔太と白川裕二郎に朗報を伝えるも「えっ、そうなの?」という感じで(少し経ってから喜ぶのだが)、まったくドラマティックな絵ではない。純烈というと、そこになんらかの名シーンが生まれそうなものだが、今年に関してはカメラをまわすのに気を取られた新宮が駐車場のタイヤ止めへ絶妙なタイミングでつまずき、すっ転びそうになった程度。  小田井涼平にいたってはスタジオ内でメイクを施され、身動きが取れない状態で知らされたものだから面白いリアクションのしようがない。いつも小芝居を心がけているのに、両翼をもがれたハシビロコウを気取るしかなかった。 「あの動画を見た人みんなが思っただろうけど、一年にマッチした決定の瞬間でしたよね。俺自身も、メンバーとして喜ぶ以前にスタッフから見たらメンバー扱いじゃなくて、どう発表します?というのを相談される側なんだなって思いました。そして、今年一年を漢字一文字で表すと“嘘”になるっていう思いも、あのちょっと作り込んだ発表の仕方をしたことで改めて思ったし……うん、俺にとっては嘘と“恥”の一年だった――」  日本中が緊急事態を迎えようという2020年2月の終わり頃、酒井はメンバーと山本に年内のライブ活動をいっさいしないと宣言した。ただ、オフィシャルなアナウンスとして発表するのは避けた。  その時点ではライブができると楽しみにするファンもいたし、イベンターとの兼ね合いで突然中止を宣言したらどうしてだとなる。あと少しすれば、自分たちから発表せずとも世の中がそういう方向にいくことを、酒井は読めていた。  そうした中でも酒井は空いた時間を利用し、普段はなかなか会えずにいた人たちへ片っ端から連絡を入れて真っ白になった3月のスケジュールを埋めていった。あそこで手をこまねいて動かなかったら、配信ドラマ『純烈ものがたり』もそれ以外のプロジェクトも実現していなかったという。
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ライブをいっさいしない決断を下した裏で……
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