ライフ

50年前、ハンバーグはご馳走だった。受け継がれる味と思い

カレーも隠れた名物料理

スゴいぞ町洋食

私もヤミツキになった黒カレー(600円)。なぜか店内メニューにはないが、入り口横には大きく紹介した紙が貼られている

 さらにカレー(600円)も隠れた名物料理だ。誕生当時の従業員がニューバーグのハンバーグをこよなく愛しており「僕はこのハンバーグでどうしてもハンバーグカレーを食べたい」と主張したのがきっかけだとか。  その熱い想いを受けて最終的にカレーを完成させたのは、誠一さんの奥さまだという。「妻も料理がうまくてね」とさらっと言う誠一さんだが、そのカレーはアマチュアが一朝一夕にこしらえるようなものではない。  玉ねぎと挽き肉を炒めたところに、セロリ、リンゴ、人参などをミキサーでペーストにしたものとカレー粉のほか複数のスパイスをミックスして煮込まれるこのカレー。いわゆる「黒カレー」と呼ばれるタイプの東京の町洋食を象徴するような一品だが、他のどの黒カレーにも似ていない。ヤミツキになるお客さんが続出するのも納得だ。他の料理と同様、親しみやすさのなかに品格のようなものが感じられる。

「嬉しそうに食べてくれるお客さんを見ると手は抜けない」

「いろんな人がいいタイミングで関わってくれて今の味ができたんだよね。運がいいよね」と語る誠一さん。時間帯によっては仁さんに代わってお店に立つこともある。 「自分が作ったものを嬉しそうに食べてくれるお客さんを見ると手は抜けないし、もっとおいしくするにはって、自然と考えちゃうよね。じゃないと毎日面倒くさい仕込みなんてやってらんないしさ」  製造部門の分離という今日的システムを早くに確立したニューバーグ。しかし、個人店の本質とは結局のところ、こんな部分にあるのだろう。食べ手一人ひとりの表情がそのお店を形づくるのだ。 【稲田俊輔】 鹿児島県生まれ。自身も飲食店を手掛ける飲食店プロデューサー。著書に『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』(扶桑社)、『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』(柴田書店) <取材・文/稲田俊輔 撮影/林 紘輝(本誌)>
関東・東海圏を中心に和食店、ビストロ、インド料理など幅広いジャンルの飲食店26店舗を経営する円相フードサービス専務取締役。自身は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に業態や店舗プロデュースを手がける

飲食店の本当にスゴい人々

料理や飲食店の内側にある本当の姿を解き明かす!

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ニューバーグ
東京都杉並区高円寺北3-1-14
11~22時(ラストオーダー21時45分)無休、(緊急事態宣言中は11~20時/ラストオーダー19時45分)
昔ながらの製法で作られたハンバーグを、安価な値段で提供し続けてくれているサラリーマンにはありがたいお店

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