更新日:2021年02月11日 17:44
ライフ

50年前、ハンバーグはご馳走だった。受け継がれる味と思い

50年以上受け継がれる「メキシカンソース」

スゴいぞ町洋食

私がたどり着いた現時点で最高のアレンジメニュー(790円)、ハンバーグダブル・ソースの半分をメキシカンに変更・コロッケトッピング。ソース追加は30円か60円で対応可。スパゲッティも50円で追加ができる

 ニューバーグの看板であるハンバーグ、そしてデミグラスソースとメキシカンソース、この3つのレシピは前の経営者の時代からそのまま受け継がれた。50年以上も前のレシピが、さらに父から息子へ忠実に伝承されたという。  その一つ“メキシカンソース”。実は、私はこのソースを避けてきた。勝手に“ケチャップ味”だと思い込んでいたからだ。ケチャップは洋食屋の陰の主役の一つだが、私はこれが前面に主張しすぎた人懐こすぎる味わいをあまり好まない。  しかし、メキシカンソースは思い込みを完全に裏切るものだった。トマトピューレがベースの甘さのないキリッとした味わいを、タバスコの辛味と酸味が引き締める。そして、それを支える香味野菜の静かに複雑な味わい。  ケチャップ味とは別物だし、最近主流のイタリア料理的なトマトソースとも異なる、クラシックフレンチからのいにしえの西洋料理という流れを汲む品格のあるソースだった。 「好きな人はメキシカンソースを倍にして、ついでにスパゲッティも増量するんだよ」(仁さん)

愛される料理とは“ディテールの積み重ね”

 そんな極めて現代的な“カスタマイズ”の自由度の高さもこの店の魅力だ。  私がたどり着いた現時点で最高のアレンジは「ハンバーグダブル・ソースの半分をメキシカンに変更・コロッケトッピング」である。  レストランらしい俵形の端正な見た目、中身はあえて肉が入らない野菜のみのコロッケ。「誰も気づかないかもしれないけど、少し干し海老が入ってるんだよ」と誠一さんが教えてくれた。確かに気づかないかもしれない。文字通り「隠し味」だ。でも愛される料理とはそういうディテールの積み重ねである。 「今どきこんな地味なコロッケ、誰も作らないよね」と誠一さんは笑うが、今となってはそういうものこそが何より貴重なのだ。そして、コロッケやサラダのドレッシングなど脇を固める料理は、知り合いだった一流ホテルの洋食コックさんのアドバイスを受けながら、なんと誠一さんの母親が作り上げたという。 「とにかく料理上手な人だったからね」と語る誠一さん。確かにコロッケもドレッシングも、派手なところは何もないが逸品である。ドレッシングはすりおろした玉ねぎがベースの正統派の洋食店の味わいに、主張しすぎない醬油の隠し味が潜んだ品格がある。コックさんのプロの技術とお客さんの好みを推し量ったマダムの感覚がうまくバランスしたということだろうか。
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カレーも隠れた名物料理
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関東・東海圏を中心に和食店、ビストロ、インド料理など幅広いジャンルの飲食店26店舗を経営する円相フードサービス専務取締役。自身は全店のメニュー監修やレシピ開発を中心に業態や店舗プロデュースを手がける

飲食店の本当にスゴい人々

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ニューバーグ
東京都杉並区高円寺北3-1-14
11~22時(ラストオーダー21時45分)無休、(緊急事態宣言中は11~20時/ラストオーダー19時45分)
昔ながらの製法で作られたハンバーグを、安価な値段で提供し続けてくれているサラリーマンにはありがたいお店

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