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大卒でも高収入の仕事に就けず。高学歴ワーキングプアは他人事ではない

輝かしい未来を見据えて猛勉強。努力が実って難関大学に入学、卒業し“高学歴”という肩書を得たにもかかわらず低収入に陥っている人がいる。高学歴ワーキングプアの問題は、アメリカでははるかに過酷な様相を呈している。現地の事情に詳しいジャーナリストの堤未果氏に聞いた。

アメリカは5年後の日本の映し鏡

トランプ支持者たちが議事堂を占拠した事件

トランプ支持者たちが議事堂を占拠した事件も

「昔のアメリカでは、四年制大学を出たらホワイトカラーの仕事に就くイメージでしたが、’80年代以降は大卒でもファストフードや清掃などの職に就く人が年々増えています。最大の理由は過去40年で6倍に高騰した学費、名門大学でない私立でも生活費込みで年600万円は当たり前。平均で数百万~2000万円の高額ローンを組みますが、なかには年利30%の消費者金融以上に厳しいものもあり、卒業と同時に借金漬けです」  だが今は学歴があっても高収入の仕事に就けず、中高年になっても借金だけが残るという構図。これは他人事ではなく、日本の未来の姿でもあると堤氏は指摘する。 「現在のアメリカで起きていることは、5年後の日本でも起きると考えるべきです。私が『ルポ貧困大国アメリカⅡ』で、米国の学費ローン地獄を書いたのが’10年ですが、いまや日本も学生の3人に1人が奨学金という名のローンを抱える時代です。教育予算を増やすか、無理なく奨学金を返済できるような職に就けなければ、状況は必ずアメリカと同じになります」

高学歴ワーキングプアが国を滅ぼす!?

 教育は国家の礎のはずだが、教育こそが次代を担う若者を蝕む本末転倒の状況が生まれている。失意の底でくすぶる高学歴ワーキングプアに必要なのは、夢であり、痛みを和らげる劇薬だった。そこにフィットしたのがトランプだ。低学歴の労働者層が主流かと思いきや、’16年の選挙戦では大卒以上の高学歴有権者の36%はトランプ支持者だったという。 「チェンジの期待とともに登場したオバマは、上位1%から巨額の献金を受けていたため、8年間で格差拡大も、学費高騰も変えられなかった。絶望した人々は、『型破りな政治家なら、すべてをリセットしてくれるかもしれない』と望みを託したのです。  しかもトランプは’50~’60年代の“グレートアメリカ”を取り戻す約束で、学費も安く中間層が厚かった時代へのノスタルジーを刺激し、メキシコの壁建設などで、自分たちの仕事を奪う『不法移民』への憎しみと愛国心をヒートアップさせ、米社会はますます分断。高学歴ワーキングプアはトランプに出会い、わかりやすい敵と愛国心によって煽動されていきました」  このままでは日本でもトランプ型政治家を受け入れる土壌が生まれるだろうと、氏は警鐘を鳴らす。高学歴ワーキングプアたちが国を分断させる日が来るかもしれない。 【国際ジャーナリスト 堤 未果氏】 NY市立大学大学院に学び、国連、米国野村證券を経てフリー。米国の政治や経済、医療など幅広く取材を重ねている。『日本が売られる』など著書多数 <取材・文/真島加代(清談社) 写真/時事通信社>
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