更新日:2021年02月12日 16:57
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国会を動かした現役慶大生の本気。「望まない孤独が自殺を増やしている」

9ヶ月で3万件以上の相談が寄せられた

 プロジェクトを走らせながら必要な機能をアップデートしていくスピード感こそ、ITの利点だ。虐待を匂わせる小学生、うつになってしまった大学生、自殺を考えるシングルマザーなど、立ち上げから12月までの9ヶ月間で「あなたのいばしょ」には約3万人以上の相談が寄せられた。
あなたの居場所

チャット相談での10代の頻出ワード。悩みに対するデータの蓄積は、今後の孤独対策において大きな強みになるはずだ

 これまでの応答率は6割と、電話相談とは比較にならないほどの高水準で対応しているが、長引くコロナ禍で相談は急増した。現在、彼らとしては不本意ながら応答率は低下傾向にある。 「ボランティアベースの取り組み、傾聴ベースの受け身の対応では、とうに限界が来ています。勇気を持ってヘルプを出してくれる人たちが確実に社会と繋がれるようにするには、国が主導して点在している相談窓口を早急に一本化するなど、大きな対応が必要です。 また、それには“孤独の定義”をしっかりと決めなければいけません。日本では、社会的孤立と、主観的な感情である孤独が混同されていることも問題なのです。確かに、孤独が平気な人もいるでしょう。文学的な孤独が尊ばれるのも理解できないわけではありません。 ただ、『孤独が人を成長させる』などの精神論が、孤独に苦しんでいる人が支援を求めづらい空気を作っていることも知ってほしい。なくさなければならないのは、“不快で苦痛を伴う、本人が望まない孤独”です」  不名誉なことに、先進国で「若年層の死因トップが自殺」という国は日本だけだ。少子化にも関わらず、貴重な世代の命が窮地に立たされている。コロナ禍で可視化された自殺者数増加という社会的闇。そこに光を届けようとする大空さんの奮闘は、始まったばかりだ。
NPO あなたのいばしょ 大空幸星さん

チャット相談をチェックするときの大空さんの様子

〈取材・文/仲田舞衣 行安一真(本誌) 撮影/山川修一〉
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