更新日:2021年02月10日 16:23
スポーツ

甲子園のエースは引退後、外車の営業マンに「頭を下げることから始めたかった」

高級車・ジャガーの販売代理店で営業に就く

大野倫

九州共立大学時代の大野倫。福岡は大野にとって、学生時代とダイエーホークス時代、そして引退後の営業マン時代をすごした縁のある街だ

  そして誰にも頼らず自分で就職先を探し、福岡市内のジャガー販売代理店に勤めることとなった。仕事内容は営業だ。「とにかく営業職を希望しました。まず頭を下げることから始めないといけないですから」と大野は平然と言う。 「いろいろな方から仕事の話をいただき、いい条件の仕事もあったんですが、何かあったときに紹介していただいた方に迷惑がかかるといけないと思い、自分で探しました。ジャガーの販売代理店で4年間働きました。まずは頭を下げることから始めないと思い、いろいろなノウハウを身につけられる営業職を希望しました。  毎日が新鮮で楽しかったですね。体力だけはありましたので。あるときなんか、タクシー会社のご高齢の社長さんから夜中の3時に呼び出しがありました。早起きだったんですよね。そういうのも苦もなくやれました」  甲子園準優勝投手、巨人入団と野球エリートとして常に陽の当たる場所に居続けた男がこのような発言をすること自体、驚きだった。と同時に、さすが大野だと思った。

母校の職員へ転職し沖縄へ戻る

 大野とは10年以上の付き合いになるが、元プロ野球選手で彼ほどバランスが取れた人間は見たことがない。父親が教師ということもあって、小中高の学業の成績はずば抜けて良かった。野球の道に行かなくともビジネスマンとして成功していただろうと思わせるほど、コミュケーション能力、行動力、発想力、胆力ともに高いレベルで備わっている。  4年間ジャガー販売代理店で働いた後、沖縄に戻ろうと決意していた最中、母校である九州共立大の職員の話が舞い込んできた。沖縄で仕事ができるのなら……と思い、入試関係の仕事に従事することになった。
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NPO法人を立ち上げて子供たちを指導
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1968年生まれ。岐阜県出身。琉球大学卒。出版社勤務を経て2009年8月より沖縄在住。最新刊は『92歳、広岡達朗の正体』。著書に『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)、『第二の人生で勝ち組になる 前職:プロ野球選手』(KADOKAWA)、『まかちょーけ 興南 甲子園優勝春夏連覇のその後』、『偏差値70の甲子園 ―僕たちは文武両道で東大を目指す―』、映画化にもなった『沖縄を変えた男 栽弘義 ―高校野球に捧げた生涯』、『偏差値70からの甲子園 ―僕たちは野球も学業も頂点を目指す―』、(ともに集英社文庫)、『善と悪 江夏豊ラストメッセージ』、『最後の黄金世代 遠藤保仁』、『史上最速の甲子園 創志学園野球部の奇跡』『沖縄のおさんぽ』(ともにKADOKAWA)、『マウンドに散った天才投手』(講談社+α文庫)、『永遠の一球 ―甲子園優勝投手のその後―』(河出書房新社)などがある。

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