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中年男のハゲ自虐、どこまでツッこんでも許されるのか?

気づけば不健康自慢の様相に

 どうしたのかと問うと、彼はしょぼくれた声で言った。 「俺こないだとうとう痛風の発作出ちゃったよ」  深いため息と共に口へ運んだのはあん肝と白子ポン酢であった。人間は懲りない。 「大丈夫。俺なんかとっくに痛風だけど普通に魚卵食ってるよ」  肩を落とすマッちゃんを慰めるように隣のイズさんが言った。なんの慰めにもならないのであった。  連鎖して方々の席から「血圧が200」だの「γ-GTPが四桁」だの「育毛薬飲んだら勃たなくなった」だのと、世紀末のような健康・育毛トークが加速してゆく。そんな悩みを吐露しながらも、酒と煙草と塩辛いツマミとあやしい育毛剤をやめられない人々を微笑ましく眺めつつ、夜は更けてゆくのだった。  毛髪に関して個人的な意見を述べると、髪なぞあってもなくてもどっちでもよくて、たぶん男にとっての女のネイルくらいどうでも良いし「まつエク付けたの気付いてくれた?」っていうわたしのウザい質問に対して(知らねーよ! オメーのまつ毛なんて見てねーよ!)って思ったであろう男性諸君たちと同じくらい気にしていない。たかが髪、されど髪でもしょせん髪。男の恰好良さって結局のところ内面から滲み出る雰囲気みたいなものが8割ぐらいだと思っているので、堂々とした佇まいでいることのほうが重要なんじゃなかろうか。自信を持ったハゲであれ。それよりもとりあえず、お酒はほどほどに。<文/大谷雪菜、イラスト/粒アンコ>
(おおたにゆきな)福島県出身。第三回『幽』怪談実話コンテストにて優秀賞入選。実話怪談を中心にライターとして活動。お酒と夜の街を愛するスナック勤務。時々怖い話を語ったりもする。ツイッターアカウントは @yukina_otani
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