「小さい店でよかった」6万円の協力金でわかれた飲食店の天国と地獄
「6万円で天国と地獄にわかれました。私はもちろん『地獄』です」
こう話すのは、東京都内で複数の飲食店を営む富永圭一さん(仮名・40代)。緊急事態宣言が発令されて以降、全ての店の営業時間は午後8時までの時短営業となっており、収入は激減。もちろん、時短営業に伴う協力金が1日あたり6万円出ることもあり、飲食業以外の人間から恨み節を浴びせられることもあるという。
「店のひとつは、家賃が月60万円、平均して1日6人のスタッフが入ります。そこに電気代、水道代、ガス代、厨房設備のリース代、食材費など、全てひっくるめて1日6万円以上のお金が飛んでいく。緊急事態宣言に入ってから客足も減り、やればやるほど赤字です。でも、やらないとスタッフの生活が保証できない」(富永さん、以下同)
当初、東京都では協力金は従業員50人以下の中小事業者が対象となっていた。大手にも支払われることになったが、「6万円」では焼け石に水、というのである。では、小規模の飲食店にとってはどうなのか?
「店が終わった後に、近くのスナックに飲みに行ったりするでしょう? 飲食業界は横のつながりが大切で、そうやって互助関係を作っていくのが基本なんですがね」
富永さんが苦々しい顔をするのには理由があった。知人のスナック経営者が最近、1日6万円もらえるのをいいことに、毎晩飲み歩いているとか。
「もう店は完全に閉めっぱなしで。うちに小規模飲食店の仲間たちと飲みに来て『スナックでよかった』『小さい店でよかった』と笑いながら話していたんですよ。頭にきて、うちでそういう話をしないでくれと言ったんですが……。あまりに失礼な態度で。6万円でここまで人が変わるのかと、悔しい思いでいっぱいです」
6万円で、と話すが、それが1か月になると180万円、2か月になると360万円だ。これだけの大金が入る見込みができると、人は豹変するのかもしれない。
都内の不動産屋の社長・森永芳雄さん(仮名・60代)が嘆く。
「コロナでピンチだからつって、店子さんの家賃下げたり、キツいところは待ってあげたりしたんだよ。だからさ、時短営業の協力金が出た店は、それで返してくれるのかな? と思っていたわけ。そしたら、うちのビルに入ってる焼き鳥屋の親父なんか、店は1日も営業せず、静岡まで温泉入りに行ってきたって、饅頭持ってきてよ。
それよりも未払いの家賃はどうしたんだと怒鳴っても、それはゆくゆく返すから、なんてさ。小遣いかボーナスだと思ってんだよ」(森永さん)
協力金6万円でわかれた明暗
まるで小遣いやボーナス
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