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今年3月で廃止される宗谷本線の12駅。一面雪原の中、レトロな駅舎がぽつんと

⑤下士別駅

下士別駅

下士別駅

 北剣淵駅から2駅、8.1キロ北に位置する下士別駅(北海道士別市)は、今回の12駅の中では待合室が一番広かった。 下士別駅 同駅も平均利用客は1日3人以下なのにコの字型に設置された木製ベンチは、10人以上の大人数が座れる仕様。また、東六線駅のように座布団も敷かれていた。平屋建ての待合室の建物には屋根付きの自転車駐輪場が隣接。数十台は停められそうな広さだ。  でも、調べてみると2011~2015年の利用人数は10人以下。宗谷本線沿線の中では比較的大きな士別と名寄に挟まれた場所にあり、最近までは通学で利用する高校生の需要があったと思われる。 下士別駅 そもそも駅から徒歩10分圏内には15軒以上の民家があり、この辺の農村地帯にしては住民の数もまだ多い。とはいえ、こちらは完全な車社会。おまけにほとんどが農家のため、通勤で列車を使うような人はいなかったようだ。

⑥北星駅

北星駅

北星駅

 宗谷本線では3指に入る秘境駅として有名な北星駅(北海道名寄市)。旭川から89.3キロ北の天塩川と小高い山に挟まれた無人駅だ。 北星駅 北星駅 ここは同路線とほぼ並行している国道40号線からも遠く、最寄りのバス停ですら3.5キロも離れているまさに陸の孤島。ただし、板張りの短いホーム以上に訪れる者の目を惹くのは、大きな赤いホーロー製の『毛織☆北紡』という看板がかかっている年季の入った木造の小屋だろう。  北星駅の待合室になっているのだが、看板の企業は1973年に業績不振などの理由から会社整理に。つまり、消滅した企業の看板が半世紀近くも残ったままという、タイムスリップしたかのような駅なのだ。
北星駅

「せめて建物だけは残してほしい」と要望する声も

 今回廃止が決定した駅の中では存続を求める声がもっとも多かったと言われており、「せめて建物だけは残してほしい」と要望する鉄道ファンも少なくない。 北星駅 莫大な負債を抱え、それに追い打ちをかけるコロナ禍での運賃収入激減でこれまで以上に厳しい経営を強いられているJR北海道。会社の状況を考えれば仕方のないことだが、2019年の夕張線、2020年の札沼線の北海道医療大~新十津川間のように毎年のように路線や駅の廃止が続くのもさびしいものだ。  せめてもの供養というわけではないが、こんな駅があったんだと知ってもらえれば幸いだ。<TEXT/高島昌俊>
フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。
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