お金

借金500万円のギャンブル狂が、初めて競輪に挑戦。金銭感覚の“守破離”を説く

無料ポイント

 翌日の正午に浜松町で待ち合わせをする。「先生が一緒なんで」とLINEが入る。競輪の先生は同じく若い編集者だった。僕は元々カジノとパチンコのような考えてもどうしようもないギャンブルが好きだったので、競輪は全く詳しくない。1,500円、もとい1,500ポイントに釣られてホイホイとついてきただけだ。それは僕の担当も同じだった。  僕は今日、競輪で汚れる。彼らの後ろをついて歩くにつれて、赤信号を渡ってしまうような罪悪感に襲われる。その度に一生懸命働いてきた数ヶ月分の自分に、 「でも無料のポイントだから」 と言い聞かせる。無料のポイントだけ。今日は1,500円を賭けて負けたら終わろう。  そう思っていたが、なんと過去の卑しい自分がすでにウィンチケットを登録していたらしく、残念ながら1,500ポイントを得ることはできなかった。

レーススタート

「名古屋競輪4レース、買い目は4通りで……」  目の前では競輪の買い目についての説明が繰り広げられていく。先生の話を聞けば聞くほど当たる気がしてきて、賭けないこと自体が負けに思えてくる。UFJのオンライン口座を見ると1万円ほど入っていた。ガス代と電気代を振り込むお金として用意していたものだ。目の前には「絶対に勝てるレース」がある。  さて、この状態で金を賭けてしまう心理を理解できないのが世の大半だが、これは無駄遣いでも自棄でもない。この1万円には少し旅をさせるだけだ。賭ける意識は毛頭無い。ものの数分預けておくだけで金が増える。この機会を逃してなるものか。  投資詐欺に遭う人間と、使ってはいけない金を賭ける人間は同じだ。  4通りの買い目に1,000円ずつ賭けた報告をする。それを聞いた二人の目が「やるねえ」と言っていた。首の後ろが熱くなるこの感じ。久しぶりだ。全員が全員の想いを背負っていた。  僕はやる。  守・破・離の破だ。  競輪には「ライン」というものがあり、例えば地元が一緒の選手同士が手を組んで走るのがほとんどだ。他のレースギャンブルに比べると変な感じがするだろう。7人が走るレースのうちの3人がラインを組んでいれば、そのうちの一人が風避けとして前を走り、後ろの二人が他の選手に抜かれないようにブロックしたりする。  単純に選手の強い弱いだけでは決まらず、さらにこのラインシステムが周知のものとして買われているのでオッズの偏り方も特徴的だ。これらを踏まえた上で先生にレース展開を教えてもらい、その通りに買った。
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守・破・離
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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