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借金500万円男に裁判所からの「本気の手紙」。泥沼の借金バトルは“事件”に

特別送達郵便

特別送達 玄関を開けたところにいたのは郵便局員だった。手には普通サイズの茶封筒。これまでもらった支払い督促の封筒は全部A4サイズだったので少しホッとする。封筒の大きさが罪の大きさだと思っていたのかもしれない。 「特別送達なのでサインお願いします。」  レイクもオリエントコーポレーションも50万円以上借りていたので、このサイズは10万円くらいだろうとタカを括っていた。切手のコレクションが目に入る。総額1,100円で5枚も貼ってある。直接持ってきた方がコストがかからないだろう、と毎回思う。きっとこの金額も請求される。借金の総額は現在430万円くらいなのでどうでも良かった。今までも、4,300円持っている時の1円を惜しいと思ったことはない。「塵も積もればなんとやら」みたいな言葉は、僕が最も嫌う言葉のうちの一つだ。直視したら失明してしまうかもしれない。  なんだ、プレゼントとかじゃないじゃん。と少しムカつきながら再びゲームを始める。オンライン対戦の調子は良かった。対戦相手のほとんどが借金を知らない中学生や高校生だ。彼らは親や先生から「こういう大人にならないように」と言われているであろう多重債務者にゲームで勝てない。気持ちが良かった。

電話でのやりとり

 令和の優れたグラフィックに画面酔いしたので、休憩がてらにさっき受け取った特別送達郵便を開封する。支払督促に返事を書くのはもう慣れた。 「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」  スマッシュブラザーズよりも先に、裁判所から新キャラが現れた。  僕の名前の左側には「被告」と書いてあった。金を借りて返すのが遅れただけなのに「事件」と書いてあった。出頭の期日と時間はすでに決められていた。月曜の10時と書いてあった。流石に目が霞む。原告はオリエントコーポレーションだった。 特別送達内容「こりゃいかん」  声に出ていた気がする。  並大抵の手紙を無視し続けていた僕だが、本当にヤバい時だけはわかる。「この手紙だけは無視できねえ」とスタンドが囁いていた。  すぐに電話をした。手紙に書いてある裁判所の電話番号から、指定された内線番号にかけると担当裁判官が出た。 「すいません呼び出しもらっちゃったんですけど」 「ちょっと待ってくださいね、事件番号を教えてもらえますか?」 「(ハ)の第〇〇〇〇〇号です」 「はいはいはい、求償金請求の。もしかしてこの日は来れませんか?」  話が早い。あまりにも早すぎる。だけど、そりゃあそうだろう。多重債務者の多くは明日のために今日働いているのだ。たとえ被告だろうと予定くらい聞いてほしい。 「あのね、この日程はもう変えられないんですよ。」 いよいよ来るところまで来たな、と狭い部屋の天井を仰いだ。
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フィリピンのカジノで1万円が700万円になった経験からカジノにドはまり。その後仕事を辞めて、全財産をかけてカジノに乗り込んだが、そこで大負け。全財産を失い借金まみれに。その後は職を転々としつつ、総額500万円にもなる借金を返す日々。Twitter、noteでカジノですべてを失った経験や、日々のギャンブル遊びについて情報を発信している。 Twitter→@slave_of_girls note→ギャンブル依存症 Youtube→賭博狂の詩

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