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「女は体で仕事取ってこい」ハラスメントで男女共に苦しむ「表現の現場」の実情

フリーランサーへのハラスメント

 こうした表現の現場におけるハラスメントを深刻化させているのが、フリーランスの多さだ。白書でも弁護士の笠置裕亮氏がこう指摘している。 「今回の調査結果の中でも、業務の発注権限を盾に、ハラスメントを甘受しなければならなかったという事例が見られる。フリーランサーの間に深刻なハラスメント被害が蔓延している背景には、契約解除に対する法的規制が手薄であり、契約解除をおそれて抵抗できない状況におかれているということが挙げられる」
舞台

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「編集部から『あなたの職務を取り上げるよう編集長に相談している』といった脅しを受けた」というライター(40代、男性)がいたが、次のような声も。 ・性的なアプローチに対して抗議したところ、メディアや業界の団体にこちらに不利な話を流すとか、名誉毀損として訴えると脅迫されたりした(20代、女性、文筆家) ・業務委託で美術家の技術スタッフとして働いていた。出張先のホテルで美術家のマネージャーから性的関係を求められたが断った。その後業務中に無視などが続き関係性が悪くなり、業務委託を解消され、仕事を失った(20代、男性、技術スタッフ) ・具体的修正指示がなく、精神的に追い詰めることが「創作上の向上」につながるという恐らく思想背景が風潮化されている大企業に、複数度にわたってダメ出しを受けた。ダメ出し時期は、昼夜の生活の自由時間がない。罵声も非常に悪質なもの。また下請けの立場上、業務を断れない時期もつづき、判断がつかない(40代、男性、映画監督) ・当時のクライアントから体を触られていた。最終的には連絡もなく、一方的に仕事の提携を切られた上に、業界内にあることないこと噂を流され、一部の仕事がなくなった(30代、女性、グラフィックデザイナー)

求められるのは包括的な法的保護

 その他、「テレビ業界は暴力しか存在しない」と絶望するテレビ制作関係者(30代、男性)、「演出家は人殺しに見えます。演出家と役者という立場があると太刀打ち出来ません。人生まで壊します」と嘆く役者(40代の女性)など、切実な声が溢れる。  なかには、ギャラリーストーカーに悩み、相談した同業者から自らに落ち度があるように言われ、「精神的にしんどくてその界隈で活動や仕事はできなくなった」美術家(30代、女性)や、劇団主宰・演出家から長年、パワハラとモラハラを受け、「死にたいと毎日思うようになりました。飛び降りるビルを探したり、実際に登った」俳優(30代、男性)など、ハラスメントによって表現の場を奪われ、生きることに絶望するまで追い詰められる人も。  しかし、ここまで見てきたようなハラスメントの被害に対しては、立法的規制はほとんどないのが現状だ。  白書は独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)副主任研究員・内藤忍氏による次のような提言で結ばれている。 「就業者か否かを問わず、表現者全般に起きているハラスメントの現状を踏まえると、イギリスの2010年平等法(Equality Act 2010)のように、仕事領域に限定したハラスメント規制ではなく、仕事、教育、サービス提供といった多領域におけるハラスメント規制を盛り込んだ包括的立法(禁止規定を含む)を導入することも合わせて検討していく必要があろう」 「表現の現場調査団」は今後、こうした実態調査に加えて、ハラスメントに関する情報提供、研修やシンポジウムの実施を通じた啓発活動、フリーランスの表現者をハラスメントから守るための法改正要求を行なっていくという。  表現の育まれる現場のアップデートが、いよいよ始まった。 <調査概要> 実施時期:2020年12月~2021年1月 対象者:表現にかかわる活動・仕事をしている人たち(年齢、性別を問わない) 調査方法:スノーボールサンプリング(調査対象者のネットワークを介して調査対象者を抽出していく方法)によるウェブ調査 回答者数:1449名(男性25%、女性62%、どちらでもない1%、無回答12%) <文/鈴木靖子>
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