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貸会議室のTKPはコロナ危機をどう乗り越えたか。社長を直撃

TKP 河野貴輝 馬渕磨理子

コロナ対応で何をしたのか

馬渕:コロナ危機の対応も早かったですね。航空業界が動く前に資金調達をしています。 河野:まず去年の3月の段階で、IRを回っていましたので、世界で何が起きているのかを国内にいるよりも、早く察知していました。 馬渕:肌感覚が早かった。 河野:去年の3月時点で、日本がロックダウンした場合、会社がどうなるのか、シナリオを書きました。当時、手持ち残高が約90億円です。去年の2月決算で、営業利益は63億円出ています。 馬渕:普通であれば、全く問題ないキャッシュです。 河野:でも、日本もロックダウンになれば、1ヶ月30億円ぐらい赤字が出る試算を出しました。90億円持っていても3ヶ月しかもたない。少なくとも1年間乗り切るためには360億円は必要だと試算しました。 馬渕:「キャッシュを持っておけ」の格言がコロナでも効いています。 河野:コミットメントラインと当座貸越枠、不動産の売却を入れて350億円を早期に捻出しました。第1四半期を終えたら10億円ぐらいの赤字だったのです。そうなれば、年間30~40億円の赤字だと計算できます。現状350億円の資金を確保しているので、ほっとしたのが、去年の第1四半期です。 馬渕:スピード感ですね。

TKPはコロナを経て筋肉質な体制に

馬渕:コロナ禍でどのような、コスト削減をしましたか。 河野:TKPは一時的に業績が落ちましたが。既に2017年9月頃の売上水準まで戻っています。ちょうど上場した時期の業績まで戻っていることになります。急回復の背景には、コロナ禍で損益分岐点をかなり下げた点にあります。コスト削減を徹底的にしたので、需要が戻ってきたときに利益が乗りやすい体質に改造しました。 馬渕:具体的には何をしたのでしょう。 河野:この1年間でやったことは、TKPの貸会議室、リージャスのレンタルオフィス・コワーキングスペース事業、アパホテルのFC、研修ホテル、リゾートホテルの事業に力を入れました。残りは最小限の体制にしました。 馬渕:事業の選択と集中ですね。 河野:危機の時は「ビジネスの基本」に戻ることが大事です。需要が戻った時に、パーティーの需要を取り込めばいいわけです。危機の時は、内製化も小さい内製化にしておく。最小限にしておいて、そこからもう一度やり直せばいいじゃないかという発想です。
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TKPは、今こそ攻めの時期
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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