ニュース

このままでは、五輪は人々の命を危険に晒すことになる<東京都医師会会長・尾崎治夫氏>

ワクチン接種の規制緩和は金儲けの道具か

―― 現行法では、ワクチン接種は医師や看護師だけに認められていますが、菅首相は医師や看護師以外の接種も認める規制緩和を検討すると述べています。 尾﨑 薬剤師や歯科医師もワクチンを接種できるようにすべきだという意見には、私も基本的に賛成です。ただ一方で、これまで政府の規制緩和は、政権に近い一部の企業や経済財政諮問会議のメンバーの金儲けの道具に利用されてきたという指摘もあります。  薬剤師によるワクチン接種を認めると、薬局でのワクチンビジネスにつながっていくかもしれません。そのため、ワクチン接種の規制緩和はあくまでも期限付きの特例として行うべきだと思います。 ―― また、政府は僻地を除いて原則禁止されている医療機関への看護師の派遣を来年2月まで解禁しました。一方、大手の人材派遣会社はコロナ禍で人材が不足する医療機関を支援すると打ち出しています。 尾﨑 これまでも人材派遣会社による看護師の僻地派遣は問題になっていました。医療機関には看護師1名が患者7名を受け持つ「7対1看護」という人員配置基準があります。これに違反すると診療報酬が下げられるため、医療機関は基準を守るために看護師の人数を維持しなければなりません。  人材派遣会社はここに目をつけ、1人当たり200万円というような高額な紹介料をとって医療機関に看護師を派遣してきたのです。毎年紹介料を得るために、看護師に1年で辞めるよう言い含める場合すらありました。  日本医師会は病院団体と連携して、金儲けではない看護師の紹介システムを作っているところですが、今回の規制緩和が火事場泥棒的な派遣ビジネスにつながらないか懸念しています。

欧米学説を鵜呑みにするがアジアの成功例を無視する日本政府

―― ワクチンだけではなく治療薬の問題も重要です。尾﨑さんは北里大学の大村智博士の発見から開発された寄生虫病の特効薬「イベルメクチン」をコロナの治療薬として承認するよう求めています。 尾﨑 イベルメクチンがコロナの治療に効果があるという臨床試験の結果は、発展途上国を中心に多数報告されています。しかし、アメリカの学術誌『JAMA』や製造元の米メルク社、米当局やWHOは否定的な見解を維持しています。  そのため、日本の学者や医師の大半は「アメリカの論文や当局が効果を疑問視しているから大した効果はないだろう」と否定的です。しかし、これでは欧米の研究を受け売りしているだけではないか。なぜ日本独自の研究を行い、自分の頭で判断しようとしないのか。 ―― コロナ対応でも「脱亜入欧」的な発想があるのですか。 尾﨑 日本人は欧米の学説を鵜呑みにする一方、台湾や韓国などの成功例を無視しています。国民規模の検査体制、ワクチンの接種体制、変異株の水際対策……台湾や韓国などから学ぶべきものは沢山あります。なぜそれを謙虚に学ぼうとしないのか。不思議でなりません。
次のページ
人々の命を危険に晒す五輪には協力できない
1
2
3
4
5
6

gekkannipponlogo-300x93
月刊日本2021年6月号

【特集1】コロナ敗戦 A級戦犯は安倍・菅・加藤だ
【特集2】日本はどこへ
【特別インタビュー】五輪延期を打ち出すか 女帝・小池百合子の深謀遠慮(東京工業大学教授 中島岳志)


おすすめ記事