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このままでは、五輪は人々の命を危険に晒すことになる<東京都医師会会長・尾崎治夫氏>

インド株主流の第五波を防げ!

―― 第四波を収束させるためには、どうすべきですか。 尾﨑 現在、東京の実効再生産数は1.1%で、いまだに拡大傾向が続いています。しかし、このまま行けば1%を切って減少傾向に転じるはずです。問題は、その後どこまで減らせるかです。第三波の時のように300人程度で宣言を解除すれば、再びリバウンドして第五波を招く可能性が高い。ましてやインド株が主流になろうものなら、最悪の事態になりかねません。当然、五輪開催も絶望的になる。  死活的に重要なのは、インド株が主流の第五波を何としても防ぐことです。そのためには、今ここで第四波を抑え込む必要がある。具体的には東京で1日100人以下まで抑え込みたい。それができなければ、政府の二大目標である「ワクチン接種」と「五輪開催」が吹っ飛ぶだけではなく、日本そのものが吹っ飛びかねない。  しかし先ほど指摘したように、緊急事態宣言で三密を避ける対策だけでは限界があります。一方、イベルメクチンなどの治療薬は使えず、ワクチン接種もなかなか進まないとなれば、基本に立ち返って他人との接触を減らすしかありません。休校やテレワークにより、学生や社会人の外出を避ける対策をとるべきです。

第三波で東京の医療体制は改善した

―― 前回のインタビューでは東京の医療体制に課題があると伺いましたが、その後の対応はどうですか。 尾﨑 東京都の医療体制は第三波の教訓を活かして、大幅に改善しています。  まずコロナに対応する病院が増えました。特に広尾・豊島・大塚などの都立病院がコロナ患者を受け入れてくれ、今では専門病院のようになっています。  コロナ回復後の高齢患者を受け入れる後方施設も増えました。コロナ患者に対応していない民間病院400か所のうち200か所は回復後の高齢患者を受け入れてくれています。110か所の老人保健施設も同様の対応をとってくれました。  さらに、自宅待機者・自宅療養者を24時間体制で見守るフォロー体制も整えました。これまでも自宅待機者・自宅療養者に対する支援は行ってきましたが、容体が急変した場合に十分対応できるものではなかった。しかし、現在はかかりつけ医、在宅専門ドクター、応急専門のファストドクターが24時間体制で見守り、何かあればすぐに対応できるようになりました。  これらの施策により、病床数が増えると同時に病床の回転率が改善されました。第四波を迎えた現在の状況でも東京の医療体制が逼迫していないのは、その成果です。  しかし、全国的には楽観を許さない状況です。特に大阪は第三波の時の東京のような状態になっています。我々の経験が他県の「転ばぬ先の杖」になるよう、情報共有や連携強化を進めていきたいと思います。
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日本のコロナ対策失敗の原因
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げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

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月刊日本2021年6月号

【特集1】コロナ敗戦 A級戦犯は安倍・菅・加藤だ
【特集2】日本はどこへ
【特別インタビュー】五輪延期を打ち出すか 女帝・小池百合子の深謀遠慮(東京工業大学教授 中島岳志)


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