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このままでは、五輪は人々の命を危険に晒すことになる<東京都医師会会長・尾崎治夫氏>

抗原定性検査で感染対策と経済活動を両立させる

―― コロナ禍は日本の医療体制のみならず、社会そのものの在り方をあぶり出したと思います。 尾﨑 もどかしいのは、「みんなで力を合わせてコロナ禍を乗り越えよう」という雰囲気にならないことです。私も医師会への批判には反論していますが、日本全体でお互いに協力し合うよりも、批判し合うほうにエネルギーが割かれていると感じます。  たとえば、政府の対策を決めているのは厚労省と感染研です。彼らは感染症の専門家ですが、クラスター対策しか知らず、PCR検査やワクチン接種に消極的でした。厚労省や感染研の知見だけでは限界があるため、政府とは異なる立場の意見も取り入れるべきです。  しかし、政府はそういう「部外者」を最初から排除して、「身内」だけでコロナ対策を決めてきた。菅首相は常々「専門家の意見を聞く」といっていますが、結論は決まっていると感じます。その結果、日本のコロナ対策は失敗しているのです。  本来、コロナ対策は国を挙げて総力戦で取り組むべきものです。政府は専門家会議に民間の専門家や現場の医師も入れ、さまざまな立場から議論を戦わせながら対策を決めていくべきです。  そのための政府の努力は十分だったとはいえませんが、今からでも遅くはありません。本当の意味でみんなが力を合わせ、コロナ対策に取り組む仕組みを作ってほしいと思います。 ―― 2月には東京都医師会、東京商工会議所、東京都知事がお互い「緊密に連携」しながらコロナ対応を行うという共同宣言を出しました。これは「みんなが力を合わせる」一例になったと思います。 尾﨑 現在はこの協力関係をさらに発展させるため、東京都と東京商工会議所、東京都医師会は感染対策と経済活動を両立させる共同プログラムを検討しているところです。  最近注目されている抗原定性検査は、80~90%の確率で感染の有無を確かめることができます。この検査を定期的に飲食店で行い、従業員と客の陰性が確認できれば、深夜営業を認めても問題はありません。もう時短要請は必要ない。  第四波の現状ではすぐに実施できませんが、落ち着いた段階で歌舞伎町など都内の繁華街で実験を行い、成功すれば感染を抑えながら経済活動を行うモデルケースとして広げていきたいと思います。  医療界と財界、行政、そして国民がみんなで力を合わせれば、必ずコロナ禍を乗り越えることができるはずです。そのために東京都医師会は、今後も各方面への協力を惜しまず最善を尽くす覚悟です。 (5月7日 聞き手・構成 杉原悠人) 記事初出/月刊日本2021年6月号より
げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。
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月刊日本2021年6月号

【特集1】コロナ敗戦 A級戦犯は安倍・菅・加藤だ
【特集2】日本はどこへ
【特別インタビュー】五輪延期を打ち出すか 女帝・小池百合子の深謀遠慮(東京工業大学教授 中島岳志)


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