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EV車普及で”トヨタの労働者は失職する説”は本当か?水素に賭ける狙いとは

本当に水素エンジン車は普及するのか?

テスラ

テスラモーターズHPより

 とはいえ、トヨタは水素エンジン車のみに一点集中しているわけではありません。  現在、「EV(電気自動車)」、「FCV(燃料電池車)」、「HV(ハイブリッド車)」、「P(プラグイン)HV」の4つの電動化技術を進めているトヨタ。どれが選ばれるかは、それぞれの国の事情やユーザーによります。現在のトヨタは、勝敗が決まるまでリスク分散して技術開発しているのです。  そんな中、先ほど説明したミライに代表される水素燃料電池車は今後どれほど普及させることができるでしょうか(理科の実験の方ですね!)。実は、意外といけるんじゃない?というのは筆者の見解です。  今、トラックなどの商用車では水素に商機があります。ヨーロッパでは、商用トラックではEVか水素かでメーカーごとに見解の差があり、必ずしも全面的にEVを使っていこうというわけではないからです。  中国も同様です。中国政府は現在、水素燃料電池車の市場拡大を急いでおり、トヨタはこのマーケットを取るために、中国にも進出しています。  とはいえ、世間ではやはりEV自動車が普及するイメージが強いのではないでしょうか。街中でも最近テスラのモデル3を見かけることが増えてきました。  しかし、EVには課題が多いです。最大の弱点は、バッテリーのコストが高いこと。さらに、充電に時間がかかり、水素自動車に比べて航続可能距離が短いことも弱点として挙げられます。  電気は貯めておくことが難しいですが、水素は貯蓄し、液化して運ぶこともできます。つまり、水素燃料電池車の方が使い勝手がよいのです。  さらに、水素燃料電池車は走行時に水しか排出しないため、「究極のエコカー」なのです。すると、ここで大きな疑問が生まれないでしょうか。なんで、これまで水素自動車は普及しなかったの?

水素は魅力的。なぜ今まで普及しなかったのか?意外な理由

 先に答えを言いましょう。  それは水素の供給インフラ面に課題があったからです。現在でも、水素ステーションの数は少なく、全国で135カ所しかありません。一都道府県あたりで計算すると3箇所もないのです。ガソリンスタンドの数を想像すれば、これがいかに少ないかわかりますよね。  現在、日本政府はカーボンニュートラルに一気に舵を切り、2025年までに320カ所、2030年までに900カ所の水素ステーションの整備を目標としています。  ただ、EV用の公共充電器の数はすでに約3万基と、水素ステーションに比べて圧倒的に差をつけられています。この数を埋めるのはなかなか大変でしょう。  さらに、車両価格の課題もあります。  トヨタの水素燃料電池車ミライは税込み710万円から。国の補助金を使えば実費負担は570万円からとなりますが、これではまだまだ一般的に手が届きにくい価格。  この点は、量産化されることで徐々に解決していくかもしれません。
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水素自動車普及の鍵は”仲間作り”
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