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EV車普及で”トヨタの労働者は失職する説”は本当か?水素に賭ける狙いとは

トヨタの水素自動車が完走

 5月23日、一つのレースに自動車関係者から注目が集まりました。トヨタ自動車が自社開発中の水素エンジン車で「24時間耐久レース(通称、24耐)」を完走したのです。
MIRAI

トヨタ自動車HPより

 クルマ好きとして知られる「モリゾウ」のニックネームで知られる豊田章男社長もドライバーとしてこのレースに参戦しました。  社長自らレースに参加するなど世界企業の社長のリスク管理上あり得ないと言われるのが一般的です。が、世界各国のモーターショーでは他社のブースにも足を運び、自身も長年ドライバーとしてレースに参加していた豊田社長は”例外”的な存在です。  トヨタによると、水素のみを燃料にしてレースを走ったのは世界初。今、環境保護の観点から電気自動車(EV)化が盛んに叫ばれていますが、同様に注目が集まる水素自動車に対する知見を持っている人はそう多くないのではないでしょうか。  ちなみに、あの電気自動車の大手メーカー・テスラの創業者イーロン・マスクは現在EVでの普及を狙っており、水素自動車には真っ向から反対のスタンスです。  では、トヨタはなぜここにきて「水素」で勝負しようとしているのか。そこには、モリゾウ氏がクルマを愛するが故の深い深い理由があったのです。  私、馬渕磨理子がギアを5速にして背景を一気に説明していきましょう。

理科の実験のアレとは違う。今度の水素自動車はこれが新しい

 トヨタが耐久レースでの完走を水素で成し得たことは、裾野が広い自動車産業にとって、大きな意味合いを持ちます。二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量が同じで、実質的に二酸化炭素を排出しないことを意味するカーボンニュートラル車を量産できる可能性が出てきたからです。 「必ずしも、EVが全てではない」というのが今のトヨタの考えなのです。  実は、すでにトヨタは水素自動車を販売しています。水素燃料電池車のミライ(MIRAI)がそれです。    が、今回の耐久レースで活躍した水素エンジン車とミライは、原理が全く違うものです。ミライの燃料電池は、理科の実験を思い出せばわかりやすいです。  水素と空気中の酸素を化合することで水と電気を生み出し、その電力でモーターを駆動するというものです。簡単に言えば、水素を燃料にした「電気自動車」なのです。  一方、今回注目が集まる水素エンジン自動車は仕組みが違います。  水素を、「ガソリンのように燃やす」自動車なのです。つまり、電気自動車ではなく、「エンジン車」なのです。いままでのガソリンスタンドで入れていた石油が水素に代わったのが新しいトヨタの水素エンジン自動車ということですね。  ということは、今回の水素エンジン車は、エンジンの技術を残しながらカーボンニュートラルを実現することで、これまでの雇用を守ることができるのです。豊田社長は会見で「すべてがEVになれば、100万人の雇用がなくなる」と話しています。  その未来に対する危惧がトヨタにはあるのでしょう。カーボンニュートラルを実現しながら、雇用を守りたい。その想いが今回のレース出場、そして水素エンジン車に力を入れる理由なのです。
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本当に水素エンジン車は普及するのか?
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