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もう「写ルンです」の会社じゃない。カメラから医療へ…富士フイルムが成功したワケ

医療事業への参入は2008年

 時は2000年。富士フイルムは頭を悩ませていました。  台頭するデジタルカメラやカメラつき携帯電話によって、写真用フィルムの需要が激減していたのです。そこで、同社はこう考えました。 「写真事業で培ってきた高度な技術を生かして事業の多角化はできないか?」  フィルムカメラからデジタルカメラという「破壊的なイノベーション」が訪れるなかで、富士フイルムが生き残りをかけた事業転換をやり遂げるには、長年の年月を要しました。  迫り来る危機の中、富士フイルムが医療事業に参加したのは、今から13年前の2008年。ある企業の買収がきっかけでした。  2008年、約1370億円で、富山化学工業を買収し、医薬品事業に本格参入したのです。  その後、再生医療のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングに40億円出資(2018年に子会社化)し、怒涛の買収劇を繰り広げます。 2011年:米製薬大手メルクからバイオ医薬事業を約400億円で買収 2012年:超音波画像診断装置の米ソノサイトを775億円で買収 2019年:米国ゼロックスの買収を断念 合弁の富士ゼロックスを約2500億円で完全子会社化 2021年:日立製作所の画像診断機器事業を約1800億円で買収  このように、次々と医療事業の買収を進めてきました。  そして現在。  今から10年前には、存在すらしなかったヘルスケア事業が、今(20年3月期)では、セグメント売上高のシェア(44%)にまで成長したのです。 【ポイント1】たった10年でヘルスケア事業が売り上げ44%を占めるまでに 富士フィルムグループの事業分野

では、富士フイルムのへルスケアセグメントとは何をしているのか?

 そんな富士フイルムは、今年4月の新中期経営説明会で、ヘルスケア事業を更に力を入れていくと発表しています。2021年3月期の同事業の売上高は約5700億円ですが、27年に1兆円を目指しています。  富士フイルムのヘルスケア事業は、「予防・診断・治療」の3つの領域があります。中でも牽引役は、医薬品の開発・生産から包装までを一括で請け負う「バイオCDMO(受託製造開発)事業」と画像診断機器などの「メディカルシステム事業」です。 「バイオCDMO(受託製造開発)事業」とは、なんでしょうか。  まず、バイオ医薬品とは、タンパク質由来や生物由来の物質により産生される医薬品のことです。がんなど難病への治療効果が高いうえに副作用が少ないことで、市場が急拡大しています。  しかし難点もあります。  それは製造プロセスが複雑であり、開発費用・製造費用が高いこと。そこで、製薬会社は新薬開発に集中するため、バイオ医薬品のように多くのリソースやノウハウが必要なものを外部に開発・製造を委託する傾向にあります。このマーケットに早くから、目を付けたのが、富士フイルムだったのです。 【ポイント2】バイオ医薬品のマーケットを早めに取りに行った  2011年にアメリカのメルク子会社を買収したことを機に、バイオCDMO事業に参入した富士フイルム。これには、製薬会社が取り組みにくいバイオ医薬品の開発を受け皿を担う狙いがあります。  同社が東洋経済の取材に応えた記事では、「この世界市場の年平均成長率は約10%で、バイオ医薬品原薬CDMOの2021年の市場規模は7000億円近くまで膨らむ」と述べています。  2桁成長が見込める分野であるバイオCDMO(受託製造開発)事業。2025年3月期に売上高2000億円を目指しており、果敢に挑戦を続けているセグメントになります。
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日立との買収は何が強みか
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