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カウンセリング時間の長い医師はクビになる。男性更年期障害、臨床の現場から

―[男性更年期障害]―

男性更年期障害と疑ったら、どこで受診すべき?

 自分の年齢を3で割り、その数字を24時間制の時刻に当てはめてみる「人生時計」という考え方を知っている諸兄も多いのではないだろうか。  たとえば42歳÷3=14時=午後2時。深夜12時までには猶予はあるが、気力・体力ともに見直しが必要な時期でもある。男性更年期障害にかかる年齢にも該当、あるいは近いからだ。  もし男性更年期障害の症状が表れたら、どうしたらいいのか。「男性更年期外来」のパイオニア的存在である、石蔵文信医師に実情を聞いた(以下、「」内のコメントはすべて石蔵医師)。 pixta_75007691_S 前回、石蔵医師は「自分のようにカウンセリングに重きを置き、かつ保険診療で診てもらえる男性更年期外来を探すのは難しい」と語っていた。その事情は、医療従事者にしかわからない部分に根ざしているという。 「カウンセリングから投薬治療の決定まで、病院が保険診療でもらえる診療報酬をご存知でしょうか。一般的には2000~3000円です。この料金体系では、1時間に7~8人は診療しないと、経営を維持できません。1時間で7人診療するのであれば1人につき8分強、8人だと7.5分の計算になります。  つまり医師たちは、カウンセリングに『時間を割きたくない』のではなく、『割けない』のが現状。患者さんの話に対して時間をかけて聞き、ストレスからくる男性更年期障害にはアプローチができないのです。これは、保険診療してもらえる精神科でも同じことが言えます。  実際に私が病院で診察していた頃、カウンセリング時間を長めにとっていたら『患者数は多いけれど収入につながらないから』と、病院を5軒ほどクビになりました(笑)。  現状の私の生活環境は、妻が眼科の医院を経営。子どもたちは医者になり自立していて、負債を抱えていないうえにスタッフを雇っていないので、『男性更年期外来』を運営できます(それでも自由診療費は高額で、1回5万円)。もしも保険診療でテナントを借りて、スタッフを何人か雇っていて私のように初回のカウンセリングで1時間半を割いていたら、3ヶ月で経営が暗礁に乗り上げるでしょうね」

自分で実践できる対処法はある

「開業医は儲かっているに違いない」という、偏見を覆す医療業界の闇。だが、石蔵医師のクリニックに通う時間・予算がなく、副作用があるテストステロン補充療法も避けたい、できれば保険診療で受診したい男性はどうしたらいいのか。  石蔵医師によると、自身のクリニックで行う『認知行動療法』の中には、自分で実践できる方法もあるとのことだ。 「私の治療ではカウンセリングを通じて、次のように認知の歪み(同じ出来事に遭遇した際に、歪んだ捉え方をすることで、自分の気持ちが不安になったりイライラしたり、ネガティブなものになることを指す)を修正していきます。  まず、物事を肯定的かつ楽観的に捉えるには、自分の頭の中で使う言葉を置き換えてみることが有用になります。
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「頑張る」ではなく「ベストを尽くそう」
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うちの・さくら。フリーインタビュアー、ライター。2004年からフリーライターとして活動開始。これまでのインタビュー人数は3800人以上(対象年齢は12歳から80歳)。俳優、ミュージシャン、芸人など第一線で活躍する著名人やビジネス、医療、経済や一般人まで幅広く取材・執筆。趣味はドラマと映画鑑賞、読書

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