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中国の人権侵害への非難決議と日本人の不安/小笠原理恵「自衛隊の“敵”」

国際社会は中国の人権侵害に「NO!」を突き付けた

 2017年以降、世界最大の人権NGOアムネスティは、中国が新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の宗教、文化、言語を消滅させる「中国化」のために手段を選ばない対応を取ってきたことを明らかにしています。拘束されていたウイグル人、カザフスタン人、キルギス人、ウズベク人、タジク人たちへの聞き取り調査の結果、組織的な暴力、虐待行為が行われていたことも報告されています。同地区では監視体制の下、「再教育施設」と呼ばれる実質上の「強制収容所」に収容され、宗教色を完全に否定されたうえで中国共産党の理念と国家観が徹底的に叩き込まれていると報告されました。これを受けて多くの西側先進諸国は問題の存在を認め、制裁処置に踏み切ったのです。  EUは投資協定の批准を凍結し、米バイデン政権は新疆ウイグル自治区での太陽光パネル製造において人権侵害に関わったとして、中国企業5社を貿易制裁の対象としました。

菅政権は住宅への太陽光パネル義務化を検討

 日本でも、今国会で「中国の新疆ウイグル自治区などでの人権侵害への非難決議」を採択するべく、安倍晋三前総理も後押しをしていましたが、公明党の反対で見送りとなりました。残念なことですが、日本政府は先進国と足並みを揃えて中国の人権侵害を非難しようとはしませんでした。それどころか、2050年にカーボンフリー達成を唱える菅政権は、住宅への太陽光パネル義務化を検討する動きすら見せています。  太陽光パネルはバイデン政権がウイグル自治区での人権侵害に関わっていると認定し、貿易制裁の対象にもなっている製品ですが、日本はこうした背景もスルーして中国の人権侵害に無関心なままです。全世界で制裁が行われていますが、日本人は事なかれ主義なのか、それとも隣国が残虐な行為を行っていることを信じたくないのでしょうか? でも、ここを認めて日本人をそんな目に遭わせないことを宣言できなければ、国防の重要性なんて語れません!  習近平主席は先の演説のなかで「中国人民はいかなる外部勢力が我われをいじめ、抑圧し、隷属させることも決して許さない」と付け加えています。実際に中国というのはそういう国なのです。嘘を嫌い従順でルールを守る日本人の感覚では想像できないような感性を持つ国がすぐ近くに存在し、その国が日本の領土領海へ強い野心を露わにしている事実。私たちはまずその現実を認め、そのうえで相応する対応と覚悟を決めなければなりません。
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見て見ぬふりをし続ける事なかれ主義の日本政府
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


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