更新日:2023年08月30日 20:17
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五輪に憤る湾岸タワマン住民。無観客なのに「厳戒態勢」でストレス爆発

職務質問に辟易する住民も

五輪に憤る湾岸タワマン住民 監視に加えて、職務質問に辟易する住民も。晴海のタワマンに住む中国人男性(50代)は言う。 「人相が悪いのは認めるけど、上下ジャージ姿でコンビニに行ったら職質され、中国人だとわかると犯罪者扱いだよ。根掘り葉掘り聞かれて頭にきた。地元の警察署の警察官から職質なんかされたことないのに。たぶん他から応援に来たヤツらだろうね」  多くの住民から不満の声が聞かれたが、現場の警察官はどう考えるのか。開催直前の某日、週刊SPA!記者は湾岸エリアに向かったのだが、地方から応援に来た警察官は散歩中の住人と雑談に応じたり、子供に手を振り返してくれたりと殺伐とした感じはなかった。某県から来たという20代の警察官は言う。 「志願制ではなく、選抜制だったので自分は五輪警備に選ばれて光栄です。東京に1か月いるんですが、来たことがなかったので正直、嬉しいですね」

“見せる警備”による国際的なアピール

 住民とのギャップも感じられるが、果たして無観客となった五輪に大がかりな警備は必要なのか。警察庁広報室にコメントを求めたが「個別にはお答えできない」と回答するのみ。  ただ、同庁の公表資料によれば、東京都を中心とした五輪の警備には、各道府県警からの応援を含め、約6万人の警察官が動員されるという。これは、国内の警備体制としては過去最大規模である。  開幕1か月前に行われた大規模警備訓練で、斉藤実警視総監は「7年以上にわたり練り上げてきた対策と訓練の成果を大いに発揮してほしい」と、警察官らにハッパをかけている。  しかし、一部住民が負担を感じるほどの警備レベルは適切なのだろうか。テロ対策や警察事情に詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこう話す。 「数年前に比べると国際テロ組織の活動も活発というわけではなく、コロナ禍でテロリストも日本に入国しにくくなっている。とはいえ、それでも五輪ほどの大イベントでは“見せる警備”が重要になる。これは、警察官をあえて目立たせて配備することで、テロや妨害行為など、よからぬ試みを予めくじく抑止効果を発揮させるというもの。そういった意味で、周辺住民が感じる警備に対する不満は副作用のようなものでしょう」
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無観客になったからといって急な人員削減はできない
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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