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新型コロナ支援制度「本当に必要な人には届かず、詐欺師や悪徳業者が不当に利益を得ている」

―[新型コロナ詐欺]―

コロナ給付金、不正受給者の逮捕相次ぐ

 新型コロナの影響を受けた人たちを支援するため、中小企業には最大200万円、個人事業者やフリーランスには最大100万円を給付する「持続化給付金」。しかし最近では、この持続化給付金を不正受給したとして、逮捕者が相次いでいる。  新型コロナ対策の持続化給付金や融資の詐欺事情に詳しいフリーライターの奥窪優木氏によると、「新型コロナ対策のための政府による経済支援を喰い物にする詐欺集団や、品薄に乗じて一儲けをたくらむ商魂たくましいマスク販売業者、さらには背に腹は代えられぬ思いで不正受給に手を染めてしまう者たちがいる」と指摘する。  奥窪氏による著書『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』では、新型コロナに関連した給付金や補助金を不正受給する連中を取材し、その巧妙な手口に迫っている。
新型コロナ詐欺

『ルポ 新型コロナ詐欺』では、持続化給付金の不正受給、偽造された税務署の収受印、ペーパーカンパニーを使った詐取、コロナ禍に乗じた悪徳商法、窮地の飲食店に不正受給をそそのかす悪質業者、マスク価格高騰の裏で暗躍していた国際犯罪組織……新型コロナ経済対策200兆円を喰い物にする連中の巧妙な手口に迫っている

厳しい状況も、政府の助けを借りない者も

 しかし一方では、持続化給付金をはじめとする支援制度の対象に該当しており、苦しい立場に置かれながら、決して政府の助けを借りようとはしない者もいる。奥窪氏はこう明かす。 「ひいきにしている飲食店を営む老夫婦も、新型コロナの影響で客足が減り、大損害を被っていました。そこで6月半ば、私は行政による各種支援制度を利用することを勧めたのですが、持続化給付金ですら自分たちがその対象になる可能性があるということを知らなかったようです。  さらに夫婦は、『そもそも税理士をつけていないから申請なんてできない』とも思い込んでいました。私ができる限り手伝うことも申し出たのですが、『国に面倒見てもらうなんて申し訳ない』、『感染して亡くなった人のことを考えたら、感染せずにいられるだけでも十分幸せだ』と言って、一向に首を縦には振らなかったのです」(奥窪氏)  奥窪氏は、「彼らのようなケースは決して少数ではない」と話す。 「政府や自治体による多くの支援制度が、利用するか否かは事業者の積極性に任せられており、強欲な詐欺師や不正受給者が不当に利益を得る一方、彼らのような慎ましい人たちには届かないというのも、皮肉な話です。  一方で、不正受給を減らすために申請の手続きを複雑にすればするほど受給のハードルは高まってします。そうなると、本来受給資格がある人が申請を諦めてしまい、悪知恵の働く詐欺師や悪徳業者による不正受給が増えてしまう。これでは、新型コロナの影響を受けた人たちを支援するという給付金の意義がなくなり、本末転倒です」
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支援制度の限界を補うには
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1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~

詐欺師や反社、悪事に手を染めた一般人まで群がっていた

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