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『シン・エヴァ』を見た東大生が「あえて”説明不足”にしている」と考える理由

劇中の世界について無知な主人公の存在

 そして、2つ目の「意図的な視点の固定化」によって、説明不足はさらに加速します。 『シン・エヴァ』では、多くの主要登場人物が、「いま世界で何が起きているのか」「このままだと人類はどうなるのか」などについて、一定の知識を持っています。  しかし、その例外となるのが主人公である碇シンジです。物語序盤の彼は、主人公であるにもかかわらず、無知な観客である我々と非常に近しいポジションにいます。

「浦島太郎」のままで進行する碇シンジ

 というのも、彼は、ある理由によって新劇場版シリーズ第2作目(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』)から第3作目(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』)までの14年間を昏睡状態のまま過ごしており、その間に世界は一変してしまったためでした。  つまり、彼は「浦島太郎」のような状態で、世界に帰還したのです。  せっかく帰還したシンジに対して、「世界の現状」や「シンジの立場」なども含め、周囲は一切の説明をしません。そのせいで、彼にはまったくの知識がないまま物語が進行します。
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なぜ観客が「説明不足」と感じるのか?
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