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<純烈物語>“酒井イズム”で夢を追い続ける山本康平は戦隊ヒーローの宿命を今も背負う<第111回>

4歳年上の白川は兄と思える存在

 家族よりも長い時間を共有するその関係性は「学校のようで学校ではなく、肉親みたいなのに肉親とも違うなんとも言い表せない距離感」だった。その中で4歳年上の白川は兄と思える存在にあった。
純烈ジャー現場

ハリケンジャーで一緒だった山本と白川が、純烈ジャー撮影の合間に中野剛プロデューサー(右)とスリーショット。映画はいよいよ9月10日に公開

「第一印象はデカいな。背もあって筋肉もすごいのに動けるからカッコいいと思って見ていましたよね。裕二郎の家まで遊びにいって、ゲームをやると僕の声がデカいものだから『おまえ、うるせーんだよ!! 夜中なんだから時間を考えろ!』って叱られてね。そんな裕二郎もハジケる時はハジケるんですよ。普段はシュッとしているのに」  こうして己の青春を注ぎ込んだハリケンジャーは、山本にとってかけがえのないものとなった。その思いが強く、放送から10年を迎えたタイミングで共演した長澤奈央とともに自ら企画し『忍風戦隊ハリケンジャー 10 YEARS AFTER』を制作。  俳優としてのキャリアを重ねる中、人生においてヒーローを経験したことはどのようなものとして残ったのか。それは、やった者にしかわからぬ“重み”である。 「当事者的には最終回を迎えた時は『これで終わったー!』だったのが、今もハリケンジャーの……と言われるし、見ていない世代の子どもたちにもバレる時があるんです。顔つきも髪型も変わって気づかないはずなのに、わかる子はわかるというのを食らった時に、いつまでヒーローを背負わなきゃならないんだってなりましたよね。これはSNSをやろうが事件を起こそうが、つきまとうものなんだなと。

20年経ってもヒーローはヒーロー

 俺が何かやったら『太田プロの山本康平が』とは出なくて『ハリケンジャーの山本康平が』となる。当時から子どもの前ではタバコを吸わないとか心がけてはいましたけど、今でもヒーローであることの責任を感じる時があります。ただ一つ言えるのは、ヒーローをやったことで今がある。それは、20年経って本当に実感します」  このような宿命を背負いつつ、もう一度ヒーローをやってみたいとも思う。それは戦隊モノに限らず、自身のアテテュードとしてそうした生き方ができればとの意思もこめられている。  家族でも仲間でも、誰かの力になれたり守れたりできたらそれもヒーロー。山本が考えるのは、同じように戦隊モノへかかわる若い俳優たちの手助けだ。『スーパー戦闘 純烈ジャー』もそれに当てはまる。 「もともと酒井(一圭)君が純烈を始めた動機もそうだったじゃないですか。番組が終わったら芽が出ないで故郷に帰ってしまう役者たちが多いから、彼らがその後も食っていけるビジネスモデルを作りたいって。これをやって、終わりというのが僕らの時代でしたけど、その先もあるという土壌を築きたい。10 YEARS AFTERで一回やりましたけど、あの時もこういうのって夢があるよなって思えたし。
純烈ジャー現場2

“二人の山本”こと純烈の山本浩光マネジャーとのツーショットに収まる山本康平(日本クラウン公式ツイッターより)

 純烈ジャーによって、後輩たちがその後も活躍できる、誰が来てもいいスタンスの枠ができたと思うんです。これは酒井イズムなのかもしれないですね、ハハハハハ。クリエーターになる? どうなんですかねえ、クリエーターはクリエーターの皆さんがいるので、僕は今回のように“つなげる”立場でいられたらいいなと思います」  誰かがやりたいと思うことをかなえるのが楽しいのだと、山本は言う。自分発信は弱くとも、他者の強い発信があれば頑張れる気がする。純烈ジャーのシリーズ化という夢は、酒井から聞いている。  そして酒井と白川、小田井涼平と後上翔太には、2018年10月5日に雨のラクーアガーデンステージで口にした東京ドームにおけるヒーローショー&歌謡ショーを実現させてほしいと願う。山本の目に、純烈ジャーはその夢をかなえるヒーローとして映っている――。 撮影/鈴木健txt. 写真提供/東映ビデオ 
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売

純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。

白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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