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<マンガ>”合コン死亡遊戯・後編”「小野寺ずるのド腐れ漫画帝国 in SPA!」~第四十六夜~

モテるための超必殺技とは――

いわゆる彼らは”モテる人達”だった。希望がないなりにもトークでこの場を楽しもうとしてくれたし、コミュニケーション能力に長けた良い人たちだった。 それでも私に向けられる態度は、無意識から香る上から目線がベースで喋れば喋るほどに、私の中には怒りが生まれた。 ただ、くしゃくしゃTシャツでトンチンカンなことしか言えない私に、彼らを怒る権利はない。むしろ(カビ臭を指摘せず)、その場を盛り上げようとしてくれる彼らに感謝しなくてはならない。私はこれ以上彼らにどうして欲しかったというのだろう。 ……今ならわかる。 「恋して欲しかった」のだ。 ……もちろん、必要な努力から逃げている横着野郎が望んで良いことではない。しかし、今を逃したらいつ恋ができるの?と焦っていた。ここで私の不適切な自信と強欲が執念を見せる。 「恋をするには、アピールよ!」 厳しいビジュアルで性格に難ありまくりの私にとって、アピールできるものはこれだけだ。 いでよ ——–個性。 「本当の個性はね、出すんじゃない、ただいるだけで滲むものなんだよ?」 心のなかの私がそう諭す。その通りだと思う。しかしこの時ばかりは「うるさい!」と、心の中でヒステリックに叫んだ。好きな人が美人彼女と帰る後ろを、ヒタヒタついて歩いたあの夕暮れ時を思い出せ。”ただいるだけ”では、何も手に入らなかった人々の思いを(頼まれてもないのに)私は背負っていた。 臆病で、上手く立ち回れない、さみしんぼたちの逃げ場が個性だって良いじゃないか、ハリボテの個性を甲冑にして、自意識の兜の中で私たちはやっと息ができている……。 もっと、生きたい。 ……「わがままに楽しめ!」 それから私は終始、土屋ア○ナさんのモノマネで「わがままに楽しめ!」と叫ぶだけの人間になった。個性の防空壕から「私を見て!」と振りかぶったバスターは予想だにしない捻れすぎた形で、よりによってリーダー格に放たれた。 黒蠅のような目をキトキトと動かし、ナッツのように大きな歯をカチャカチャさせ、言葉が通じないカビ臭痩せ女がそちらの主将をロックオン。彼はどれだけ怖かったろう。なんでこうなってしまったのか、自分でも本当にわからない。 ただ、恋がしたかった。 誰も「わがままに楽しめ」なかった合コンの幕びきである。

あの時の“彼”へ……

P.S もしあの時の“彼”がこの記事を見ていたら……。 脳外科医になれましたか? あのときあなたすごく怒ってましたね。「いつかお前の頭蓋骨に穴を開けて脳の異常を見つける」って捨て台詞、ドキドキしました! 私待ってます、色んな準備できてますよ! 早く脳の異常を見つけてください。よろしくです。
'89年宮城県出身の役者、ド腐れ漫画家。舞台を中心に活躍後、'19年に「まだ結婚できない男」(関西テレビ)で山下香織役、'20年「いいね!光源氏くん」(NHK)で宇都宮亜紀役など、テレビドラマでも活躍の場を広げる。また、個人表現研究所「ZURULABO」を開設し、漫画、エッセイ、ポエムなどを発表。好きな言葉は「百発百中」。 Twiter:@zuruart

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