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自己主張が強すぎるモンスター新入社員。専門家に聞く行動心理と対策

社会と向き合えない若者たち

モンスター新人「自分をよく見せようとする中で、他者への攻撃行動が出てきていると考えられます。他罰的になり責任転嫁することで、自分の存在を守ろうとしているのです。ただこうした心の動きは、本人に自覚が無い可能性が高い。無意識に振る舞っているので、すぐにバレる嘘をついてしまうんです」  行動の原理としては自分をよく見せるためであっても、本人の思考はそこまで及んでいないという。これでは周囲がいくら注意したところで、解決のしようがない。 「ボロが出始めてから退職したのも、集団の中で自分の方向付けができなくなったからでしょう。引きこもりの子をむりやり外に出そうとするのに似ています。いわゆる“非社会性”の状態です」  昭和から平成にかけて、法に反する行為や他者を害する行いをする若者は“反社会性”があると言われてきた。しかし池田氏いわく、個人主義的な考えが進んだ結果、現在は反社会性から非社会性に変わってきているそうだ。 「反社会性は反抗心や反発心を含んでいて、他者や社会とのコミュニケーションの中で生まれるものです。一方の非社会性は、他者と対峙せず自分独自の世界で生きようとします。自身の人格、価値観、生活の枠の外に出ようとしないんですね。代表的な例が不登校や引きこもりです」  たとえ社会に出てグループや組織に身を置いていても、人間関係に対する意識は希薄なのだという。 「非社会性の人は協調性や同調性がなく、感情交流ができない。本人たちは『生きていることで自分たちは社会性がある』と考えていますが、実際には人間性の成熟度や意識レベルがぐっと下がってきています」

対策マニュアルを作っておく

モンスター新人 非社会性を持つ若者は今後増えていくという。そうした人間が入社してきた場合、会社や周りの社員はどう対応すればよいのか。 「早い段階で人事の規定などと照らし合わせ、協議するしかありません。問題行動が出てきた時点で対処する。根本的な対処は病院かカウンセラーしかないので、産業医を活用するなどしていくほかないでしょう。これからの日本は、企業にも組織罰(組織を罰する法律)の概念が出てくると考えられます。社員が問題行動を起こし損失や被害があった時、企業が問われる責任も増してくる。それに備えて、対処方針を明確にしておくべきです」  人事に関する評価制度やコンプライアンスの徹底した策定が、会社や周りの社員を守ることに繋がる。「会社として説明責任を果たす材料を持っておき理論武装をしないと、問題を起こす社員に対応できない」と池田氏は説く。 「問題ある社員との人間関係の構築を、自分自身や職場が許容できるか。おかしいと感じる行動があれば、『なぜ?』をその場で本人に問うてみて、その反応を見て判断することも早めの解決に有効です」  職場を悩ませるモンスター社員の存在。職場の環境を保つためにも、早期の「見抜き」が必要だ。 <取材・文/倉本菜生>
福岡県出身。フリーライター。龍谷大学大学院修了。キャバ嬢・ホステスとして11年勤務。コスプレやポールダンスなど、サブカル・アングラ文化にも精通。X(旧Twitter):@0ElectricSheep0、Instagram:@0ElectricSheep0
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