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ミスタードーナツ「4年で200店が閉店」の謎。コンビニスイーツ人気が逆風に

どれだけ“定番”を増やせるか

 さらに、ミスドはドーナツ市場を広げるための工夫も進めています。  ドーナツはおやつ・スイーツのイメージが強いですが、食事としても日常的に食べられるドーナツをコンセプトに開発した「むぎゅっとドーナツ」も展開し、こちらも好調。とはいえ、ミスドの売上を支えるのはいまだに王道の「エンゼルクリーム」「ポン・デ・リング」などの定番メニュー。  つまり、ミスドは今後どれだけ”定番”を増やせるかがV字回復できるかのポイントとなるでしょう。  そのほか、来店前の注文、受取時間指定ができる“misodoネットオーダー”の導入を進めたほか、株式会社出前館と提携してのデリバリーサービスの拡充を進めたことも、ミスド回復を支えています。

ミスドを非日常ではなく”日常”にできるか?

 これまで、私はさまざまな飲食店の経営戦略を分析してきましたが、飲食業界の勝者になる鍵は、一口でいえば「日常食にできるか」。そう考えると、ドーナツはそれに選ばれることが難しいのは明らかです。  毎日サンドウィッチを食べる人はいても、毎日ドーナツを食べる人はそう多くありません。そのため、ミスドは「日常食」になれない自らの業態を理解し、いつもと違う「ハレの日」の食べ物としてドーナツを届けることで、人気を取り戻そうとしているのでしょう。  そんな国内市場が不振なミスドですが、希望の光は見えています。海外進出はまだ勢いがあるのです。ミスドは現在、台湾、タイ、フィリピン、インドネシアでも事業展開しており、海外店舗数の合計は2017年の4190店から、2021年には7892店と4年で約3700店舗増やしています。
ミスド店舗数

ミスド店舗数(国内、海外)の推移。筆者作成

 国内不振のあいだに海外で事業を拡大すれば、まだ回復の余地は残されています。  どこか暗いムードが日本社会を漂う中、回復を図りはじめているミスドの姿勢を見ていると、かつてCMソングに使われた山下達郎さんの「ドーナツ・ソング」が聞こえてくるのは私だけでしょうか。
馬渕磨理子

馬渕磨理子

<文/馬渕磨理子>
経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi
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