更新日:2022年02月26日 11:21
エンタメ

世の”不寛容な空気”に抗う KOC王者・空気階段の初冠番組

ロケ重視だからこそ生まれた”厚み”と”温かみ”

 もうひとつ番組が異質な点は、コロナ禍もあってかチームワークを重んじたトークバラエティが全盛の今、果敢にスタジオを飛び出し、ホームラン級のハプニングを求めロケ重視となっている点だろう。そうした姿勢が、意外な感動を生み出した回もあった。  たとえば高円寺ロケ回。もぐらが10年以上住んでいるという高円寺の商店街に【おめでとう キングオブコント優勝 鈴木もぐらさん】と書かれた垂れ幕がかけられたことに端を発し、高円寺の魅力を全国に伝えようと空気階段のふたりが街ブラロケすることに。
 もぐらが馴染みの店に顔を出すだけで、どの店主や店員も「おめでとう!」と笑顔で返す。借金まみれでギャンブル狂のもぐらが地元を歩いているだけの光景なのに、妙に胸が熱くなってしまった。もぐらが高円寺で過ごし、くすぶり、もがいた長い歳月と、その姿を見続けてきた街の人々の交流に、凡庸な街ブラにはない“厚み”と“温かみ”があったからだ。

コント師は2度売れる必要がある

 最後に馴染みの居酒屋を訪れたもぐらが、奥さんとのなれそめを語り始めた。 「今の嫁さんをここに連れてきて、ネズミしかかからない病気に僕がなった話をしたんですよ。そうしたら彼女、『何の遺伝子?』と笑って、僕を好きになってくれたそうです」  クズ芸人・鈴木もぐらと、不愛想なツッコミ・水野かたまり。この番組を観れば、「何の遺伝子?」とばかりにこのふたりの魅力もわかるはずだ。  コント師はコントでいろんなキャラを演じるため、ネタで売れても次は本当の自分のキャラで売れる必要があると言われる。つまり、コント師は2度売れる必要があるのだ。そのため、前述したもぐらの「ギャンブル狂」や「デブ」といったキャラをイジってくるこの番組を足掛かりに、空気階段は確実にハネてくるだろう。  放送開始から1クールが経過した現在も、閉店する店の在庫処分を手伝いながらそのなんとも言えない”空気”を観察してみたり、都内随一の激安物件を内見する際の”空気”を観察してみたりと、バカ騒ぎしながらも昨今の不寛容な“空気”に抗い続ける。この番組に注目だ。 取材・文/村橋ゴロー
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