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錦鯉、歓喜の号泣…「おっさんによるおっさんのためのM-1」決着までのドキュメント

▼3番手:ゆにばーす

ゆにばーす

ゆにばーす ©M-1グランプリ事務局

 3番手に登場は3年ぶりに決勝の舞台へ舞い戻ってきた男女コンビ「ゆにばーす」。最近、よく見られる漫才の途中からコントに入る「漫才コント」と違い、互いのお喋りだけで魅せる「しゃべくり漫才」で勝負してきた2人。「男女の友情はアリか? ナシか?」という議論を男女コンビならではの視点で漫才に落とし込んだ。こういった議論系のネタは基本的にボケ的なセリフを一切言わない。2人もそうだったが、それでも笑いが起こるのは完璧な構成で仕上げたからこそである。ツッコミ担当川瀬名人のネタ制作能力の高さ、ボケ担当はらさんの演技力の高さを十二分に堪能できた。  得点638点。この時点で「モグライダー」を1点上回り、第1位に躍り出たが、審査員7人中4人は「モグライダー」のほうに高得点をつけているという皮肉な結果となった。巨人師匠から「気合が入りすぎた」、松本さんからは「後半にかけて爆発できそうでできない」と厳しい意見が飛んだ。これだけの意見が出たのは期待の現れ。2人ならば超えられる壁だと思っての意見だと感じた。2人なら簡単に超えてまたこの舞台へ帰ってくる。必ず。

▼4番手:ハライチ

ハライチ

敗者復活決定の瞬間 ©M-1グランプリ事務局

 4番手は敗者復活組である。決勝大会が行われる約3時間前。敗者復活戦は壮絶を極めた。今回の敗者復活戦は過去のファイナリストが16組中6組も出場している異例の事態であり、その中には「見取り図」「ニューヨーク」「東京ホテイソン」という前年のファイナリストが3組存在している。事前予想の記事でも書いたが、2016年大会の「和牛」から昨年の「インディアンス」まで、すべて前年の決勝進出者が敗者復活戦を勝ち上がっており、この3組の中から選ばれてもおかしくはない状況だった。  えてして、こういった場合はその後に出るコンビが比較されて割を食う羽目になる。出番順の抽選により「見取り図」の後が「ハライチ」、「ニューヨーク」の後が「男性ブランコ」、「東京ホテイソン」の後が「金属バット」となった。ベスト3に残ったのが「ハライチ」「男性ブランコ」「金属バット」の3組。そうなのだ。後出番を任されたこの3組が前年のファイナリストを食ったのだ。そして、敗者復活戦を勝ち上がったのが「ハライチ」。ラストイヤーに決勝の舞台へ舞い戻ったのだ。
ハライチ

ハライチ  ©M-1グランプリ事務局

 ネタは敗者復活戦で爆笑をかっさらったネタではなく、お互いに今後やりたいことを言い、それを否定していくというネタだ。ツッコミ担当澤部佑君が怒るシーンは今までも見たことはあるが、今回はボケ担当岩井勇気君が大暴れして怒るという新鮮なシーンもあり、最後のM-1で躍動した。  岩井君本人も「これがやりたいネタだった」というこだわりで披露したものの得点は伸びず、636点。「M-1グランプリ、ありがとう。楽しかった」と岩井君は爽やかに言い残し、5度も決勝の舞台を踏んだ怪物「ハライチ」のM-1は幕を下ろした。
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真空ジェシカ、オズワルド
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1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。著書『芸人迷子

芸人迷子

島田紳助、松本人志、千原ジュニア、中川家、ケンドーコバヤシ、ブラックマヨネーズ……笑いの傑物たちとの日々の中で出会った「面白さ」と「悲しさ」を綴った入魂の迷走録。

⇒試し読みも出来る! ユウキロック著『芸人迷子』特設サイト(http://www.fusosha.co.jp/special/geininmaigo/)

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