錦鯉、歓喜の号泣…「おっさんによるおっさんのためのM-1」決着までのドキュメント
史上最年長ファイナリスト「錦鯉」の戴冠で幕を下ろしたM-1グランプリ2021。今年で17回目を迎えた「漫才の祭典」が感動決着を迎えるまでにどんな勝負の機微があったのか。第1回M-1準優勝の経験を持つユウキロック氏が振り返る。
【画像をすべて見る】⇒画像をタップすると次の画像が見られます
昨年のマヂカルラブリー優勝。そして、世間を巻き込んだ「漫才か? 漫才じゃないか?」論争。M-1グランプリ2020に端を発したすべてが呼び水となり、多様な漫才スタイルが台頭。出場者は過去最多6017組に膨れ上がり、まさに「大漫才時代」へと突入したM-1グランプリ2021。初出場組5組と決勝経験組4組が己の漫才スタイルで世間に叫ぶ。「自分たちの漫才が一番面白い」と。
ファーストステージトップバッターは初出場の「モグライダー」。「美川憲一さんが『さそり座の女』を歌う直前に星座と性別を当てずっぽで聞いてきた輩がいる。だから歌い出しが『いいえ』から入って落ち込んでいる。歌い始めるまでに『さそり座の女』以外の可能性を全部消す」というめちゃくちゃ面白い設定。
審査員からは「バカなのに知的なネタ」「声がいい」「いいところに目をつけている」など軒並み高評価を得るも得点637点で敗退。「トップがもったいない」と審査員が口を揃えるほど順番次第では可能性を感じさせたネタであり、来年も期待させる出来だった。
2番手に登場したのが今大会大注目の奇天烈漫才師「ランジャタイ」。「風が強い日に飛んできて顔に引っ付いた猫を飼うか?」というくだりから始まるネタで、そこからは猫が体に入り込んだり、将棋ロボになったりと予想外の展開が続き、それをボケ担当国崎和也君が絶叫しながら大暴れして演じていく。まさに「ランジャタイ」ワールドをM-1という日本最高峰の舞台で堂々と披露。
ネタ終了後、困惑の表情を浮かべる審査員。どう評価するのかも注目だったが得点は628点。96点をつけた立川志らく師匠からは「ツボにはまった」と高評価を得るも、事務所の先輩サンドウィッチマン富澤たけし君は「決勝だぞ、お前ら!」と叫ぶ。その後、ほかのコンビの審査コメント時にも事あるごとに上沼恵美子さんにイジられる始末。
そんな中「見る側の精神状態による」とコメントした松本人志さんはさすがの一言。ファーストステージ敗退が決定した際には、オール巨人師匠の等身大パネルを複数用意し会場を沸かせ、巨人師匠にパネルを使用するための断りの手紙を書いたことを暴露され、人のいいところも垣間見せた。最下位に沈んだもののある意味、「勝者」となり、来年の活躍が期待できる敗退であった。
▼1番手:モグライダー
▼2番手:ランジャタイ
1972年、大阪府生まれ。1992年、11期生としてNSC大阪校に入校。主な同期に「中川家」、ケンドーコバヤシ、たむらけんじ、陣内智則らがいる。NSC在学中にケンドーコバヤシと「松口VS小林」を結成。1995年に解散後、大上邦博と「ハリガネロック」を結成、「ABCお笑い新人グランプリ」など賞レースを席巻。その後も「第1回M-1グランプリ」準優勝、「第4回爆笑オンエアバトル チャンピオン大会」優勝などの実績を重ねるが、2014年にコンビを解散。著書『芸人迷子』
⇒試し読みも出来る! ユウキロック著『芸人迷子』特設サイト(http://www.fusosha.co.jp/special/geininmaigo/)
記事一覧へ
『芸人迷子』 島田紳助、松本人志、千原ジュニア、中川家、ケンドーコバヤシ、ブラックマヨネーズ……笑いの傑物たちとの日々の中で出会った「面白さ」と「悲しさ」を綴った入魂の迷走録。 |
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ