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国政は衆議院で決まるのではない。参院選で動く/倉山満

日銀人事には衆議院の優越が無い

 もし総理大臣が衆参両院で多数を得ていれば、思うような人事が可能で、経済政策を差配できる。安倍元首相は日銀人事だけは間違えず、「アベノミクス」による景気回復が長期政権をもたらしたのは記憶に新しい。逆に、福田康夫元首相などは自らが提示した人事を、当時の民主党が多数の参議院で否決され、野党の思うがままの日銀総裁を押し付けられた。自民党は何もできずに下野に追い込まれた。  なぜこうなるのか。日銀人事は国会同意人事といって、衆議院の優越が無い。だから衆議院でどれほどの多数を持っていようが、参議院の多数派が与党と異なる「ねじれ国会」ならば、首相は最も大事な経済政策で自分の意思を通せないのだ。

今年7月の参議院選挙の勝者が、次の日銀総裁を決める

 さて、スケジュールを確認しよう。今年7月に参議院選挙がある。来年3月が正副日銀総裁の一斉交代だ。つまり、今年7月の参議院選挙の勝者が、次の日銀総裁を決めるのだ。  仮に岸田文雄首相が参議院選挙に勝てば、既に衆議院でも多数を得ているので、3年間は国政選挙が無いと見られている。その岸田首相の経済政策だが心もとない。「新しい資本主義」をやりたいらしいが、中身は聞けば聞くほど社会主義だ。その「新しい資本主義」が何なのか、有識者を集めて検討しているが、二言目には「増税」の二文字が飛びだす。岸田首相は財務省に依存している政権だと思われているが、選挙前までは安全運転、参議院でも多数を得れば増税に舵を切ると構えていた方がよさそうだ。

岸田首相が増税に舵を切るか否かの試金石が日銀人事

 その試金石が6月に2人の委員が交代する、日銀人事だ。現在、9人中リフレ派(つまり景気回復派)が4人。中でも最も強硬に景気回復を主張する片岡剛士委員が交代する。  ここで今の景気回復路線に反対の勢力は、反リフレ派を送り込む必要はない。単なる中間派、総裁ら執行部に忠実な人物に代えるだけでいい。そして来年の3月まで待つ。その時には、安倍内閣以来の景気回復路線に懐疑的だと言われる日銀出身の雨宮正佳副総裁が総裁に昇格すると目されている。空いた副総裁には、財務省OB。その時には、リフレ派の若田部昌澄副総裁は外されるだろう。  岸田首相が本当のところで何をやりたいかわからないが、国民が政治への監視を怠ると何をされるかわからないのは、コロナで懲りたはずだ。
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国民が監視を怠ると「マトモな野党」は成立しない
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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