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名門「プリンスホテル」1500億円売却は衰退か英断か。日本のホテル事業の限界とは

所有と運営を分離するメリット「持たざる経営」

苗場プリンスホテル

苗場プリンスホテル

 今回の売却は、所有はファンドのGICですが、運営は引き続き西武HDが行います。  日本のホテル事業では、一般的に土地・施設の所有と運営のすべてを1社で担うのが当たり前ですが、海外では「所有」と「運営」を分離させることで成功している事例が多く存在します。そのため、今回の売却については「ビジネスモデルの転換」ととらえるべきです。  日本はどうしても「土地を保有していると安心」だと感じる「土地本位主義」が根付いています。間違ってはいませんが、ホテルやエンターテイメント施設のように、大規模な土地や施設を保有するにはコストがかかります。  そのため、企業の収益力に対して資産が大きすぎるという財務上のいびつさも生まれやすいです。  実は、世界のホテル業界では「所有」と「運営」の分離は40年ほど前から進められてきました。例えば、全世界に約7600のホテルを持つマリオットホテルなどがそうです。ホテル自体を所有しないで運営に特化するという「持たざる経営」のほうがうまく成長できます。  

星野リゾートの成功手法

 具体的にはホテルの運営会社は土地や建物を所有する企業に、賃貸料を払って営業を行います。これによって自前で土地を購入してホテルを建設するよりも少ない資本で利益を上げることが可能になる。  日本でこの手法で成功しているホテルが「星野リゾート」です。  地域ごとの特性を生かして魅力的なホテル運営をしている星野リゾートはファンが多いです。  星野リゾートは経営破綻した老舗旅館やリゾートなどの再生を行いますが、土地や建物を丸抱えするわけではなくあくまで「運営」に特化しています。だからこそ、ホスピタリティが高く、それぞれの地域らしさを色濃く反映した個性豊かな宿泊施設を運営することができ、コロナでも好調です。
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業界ナンバーワンが英断した意味合い
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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