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EV一辺倒のクルマ業界でトヨタが「それでも首位を取る」意外な理由

アメリカで自動車販売台数首位を独走

トヨタ自動車ホームページ

 トヨタの快進撃が止まらない。トヨタは、カーボンニュートラルの多様な選択肢を提供することを強く訴えています。カーボンニュートラルのどのカタチを選ぶのかは我々トヨタではなく、地域ごとに異なるという考え方です。 「未来を予想する」のではなく、「変化にすぐに対応できること」が大切だと考えている。  これが、今のトヨタのメッセージです。  年初から米国の利上げ前倒しの報道などで株式市場は大いに荒れていますが、トヨタは上場来高値を更新し、日本株を牽引しています。  いまや、アップル1社で日本の東証1の時価総額の半分を飲み込まれるにまでに、「格差」が広がるなかで、トヨタは日本の一筋の光だと言えるでしょう。  1月4日の発表では、トヨタの新車販売台数は233万台(前年比10.4%増)、米ゼネラル・モーターズ(GM)の221万台(前年比12.9%減)と上回り、2021年の米国での新車販売台数で、トヨタ自動車がGMを上回り年間首位となりました。  年間ベースでGMが首位の座を失うのは1931年以来初めてです。  半導体不足による生産減で、自動車業界は厳しい状況に立たされ、GMや米フォード・モーターが販売台数を前年から大きく減らしました。一方で、そんな厳しい状況の中でも生産を維持し、トヨタが逆転したのです。  厳しい時代の中でも、トヨタがなぜ強いのか。トヨタに死角はないのか。  本連載で紐解いて行きましょう。

なぜ、トヨタがGMを抜いたのか

(株価も上場来高値を更新)

 米国の自動車市場は中国に次ぐ世界2位の規模ですので、マーケットとして重要な位置を占める米国での首位奪還。    首位となった理由の1つに、トヨタは半導体の確保がうまくいっている点が挙げられます。昨年は半導体不足の影響でGMは米国やカナダの工場で減産を実施したことで、販売が大きく落ち込みました。トヨタも影響を受けて減産しましたが、影響はGMより小さかったのです。  自動車向け半導体が世界的に不足する中で、トヨタ自動車への影響は軽微にとどまっているのはなぜか。  1つは、東日本大震災を機にサプライチェーンの再構築をしてきた取り組みが功を奏しています。半導体は生産から製品として届くまでに時間がかかることを考慮して、トヨタはサプライヤーと連携し、平時から約4カ月分の在庫を確保するようにしていました。  平時からの取り組みが、コロナで発揮され、これによって、年間を通して多目的スポーツ車(SUV)の新型車を主要地域でほぼ予定通り投入できました。また、完成車工場で生産車種の入れ替えをリモート支援するといった取り組みも寄与しています。  今回、半導体逼迫時においては、サプライヤーに出向き、在庫管理や生産・物流の状況などを詳細に分析しています。各社が頭を悩ませた半導体不足もグループ会社のデンソーとの連携で影響を最小限に抑えることに成功したわけです。地道な取り組みが、影響を限定的にできている要因だと言われています。  そして、トヨタは半導体の需給逼迫が和らぐことで年明け以降、自動車の生産が回復する見通しです。「挽回生産」の動きはトヨタに人材を派遣している企業への取材からも期待度の高さが伺えます。  さらに、株式市場では、積極的な株式分割などの株主還元や業績の上方修正期待などを背景に機関投資家や個人投資家からの買いを集めています。
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過去の「ジャパン・バッシング」が懸念か
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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