「広島方式」を取り入れていた広島県は?
次に「
広島方式」*で知られる広島県の統計を見ます。広島県では、12月25日頃にο株Surgeが始まったと考えられますが、1月7日に抗原検査を含む検査が飽和し、1月10日以降、統計が飽和しています。
<*誰もが何度でもPCR検査を無料で受けられるとする広島県独自の感染拡大防止策。
参照>
2月18日現在、抗原検査を含む検査充実率は、4前後と著しい検査飽和を示していますが、広島県は、全国ではややマシな方といえます。
広島県でも日毎新規感染者数500ppm足らずで統計が飽和していますが、2月7日頃に減衰に転じたと考えられ、半減期20日程度でゆっくりと減少しています。
広島県における検査数(橙点 ppm)、日毎新規感染者数(青点ppm)と日毎死亡者数(黄点ppm)、検査充実率(黒点 片対数 左軸) の推移2021/11/01〜2022/02/18(NHK及び広島県集計・統計処理と作図は牧田による)
九州中四国は、高知県を除き2月初めを極大にゆっくりと減衰しつつありますが、全てで検査の飽和が継続しており、現状把握は非常に難しいです。少なくとも検査充実率が評価出来なければ、死亡統計の確定によって統計の復元が可能となる半年後までは何が起きたか分かるのはかなり難しいです。このため再利用可能な形で検査数統計を公表している広島、香川、愛媛、高知、福岡、長崎、大分、鹿児島の8県のみを筆者は定期統計追跡しています。
現在、再利用可能な形で検査数統計を公表しているのは25都道府県であり、その中でも統計の質が最低限備わっている都道府県はたいへんに少ないです。
日毎死亡者数が過去最高を更新している維新府政の大阪
関西から東日本にかけても今後極大期を経て減衰に転じると考えられますが、やはり世界の先行例であるSurge開始後30日で極大という基本パターンより10〜20日程度遅れており、2月初頭を予測していた極大期が2月半ばにずれ込んでいます。
また北陸、東北は、遅れて1月に入ってSurgeが始まったために2月末に「ピークアウト」になると予測されます。
甲信越では、山梨県で下げ止まりがみられ、長期増加への転換を意味するゴールデンクロスが2月17日に出現し、監視中です。
北海道については、2月14日前後に減衰に転じた兆候がありますが、統計が飽和しているために月末までの観測が必要です。
このように、
検査抑制の結果、精々800〜1200ppm程度で統計が飽和するような検査態勢では、Surgeが起こると統計から現状を把握するという防疫の基本中の基本が困難となります。このため社会的行動制限の緩和を迅速に行うことが出来ません。尤もマンボウは、中途半端で的外れなためアナウンス効果以外全く無意味なので、5分ごとに15秒の「コロナ怖い怖い」プロパガンダCMを全波長全帯域で流した方が遙かにマシです。
本邦では、統計の飽和が第3波の東京以降、第4波大阪、第5波東京を中心に局所的に発生してきましたが、第6波では47都道府県全てで発生し、既に飽和状態が一月半以上継続しています。
それでは大阪府を見てみましょう。
大阪府における検査数(橙点 ppm)、日毎新規感染者数(青点ppm)と日毎死亡者数(黄点ppm)、検査充実率(黒点 片対数 左軸) の推移2021/11/01〜2022/02/19(NHK及び大阪府集計・統計処理と作図は牧田による)
大規模な医療崩壊が生じ、日毎死亡者数が過去最高を更新している大阪府ですが、統計上は一月を超えて毎日千人に一人以上が新規感染している状況が続いており、実測値からは既に5%前後の住民がο株に感染したことを示しています。
既述の様に統計の実測値は、飽和しているために著しい過小評価となっており、これまでに中央値で25%程度の住民がο株に感染している可能性があると言えます。
2月19日現在での第6波による大阪府での感染者は約37万人、死亡者は515人ですが、死亡は新規感染者統計の遅行指数ですので最低でも10日遅行します。加えて死亡者数の集計は報告・集計遅れで30日前後遅延しますので、現時点で致命率(CFR)を算出出来ません。沖縄県などで、第6波のCFRを計算し、ο株は脅威ではないと主張した専門家がいますが、死亡統計の遅行日数・集計の遅延を完全に無視したもので、極めて基礎的な誤りです。絶対にやってはいけな事で、その程度の注意事項は、BBCやCNNの一般ニュースですら注釈していることです。
大阪府は、死亡日別の死亡者数統計を公表してきていますので、飽和によって壊れた統計は、死亡日別死亡者数統計から復元可能です。実際に筆者は第4波でこれを行っています。但し、死亡日別死亡者数統計が確定するには半年ほどの時間を要しますので8月頃に壊れた感染者数統計の復元が可能となります。
なお、グラフから分かるように大阪府では、抗原検査込みの検査充実率がやや持ち直し基調です。一方で日毎新規感染者数は、一週間変化率からも下げ渋りをみせており収束の見込みが全くありません。むしろ沖縄のような反転増加を強く警戒すべきです。
まきた ひろし●Twitter ID:
@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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