更新日:2022年03月06日 16:57
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オミクロン株は「ピークアウト」? 一方で統計で明らかになる「謎々効果」の消失

消し飛んだ謎々効果(Factor X)

 最後に、韓国、英国、日本、合衆国、香港、フィリピン、台湾、中国における百万人あたり日毎新規感染者数と検査陽性率を見ましょう。
韓国、英国、日本、合衆国、香港、フィリピン、台湾、中国における百万人あたり日毎新規感染者数(ppm 7日移動平均 片対数)と検査陽性率(色分け)

韓国、英国、日本、合衆国、香港、フィリピン、台湾、中国における百万人あたり日毎新規感染者数(ppm 7日移動平均 片対数)と検査陽性率(色分け)(OWID

 一見して明確ですが本邦は、遂に米欧の集団に入ってしまいました。2年前に南アジア、東アジア、大洋州、後にアフリカ大陸で、原因不明の感染率の低さ、南北アメリカ、欧州、中東に比して1/1000から1/10しか感染しないという謎があり、特に本邦の属する東北アジアではその効果がもっとも強いものでした。これを筆者は「謎々効果」と名付け、おなじものをFactor Xと命名した人たちもいます。  本邦において謎々効果は波が来るごとに弱くなって行き、第5波では消えたかに見えましたが、辛うじて効果が残っていました。しかし第6波では謎々効果が全く発揮されていません。  これは韓国と豪州も同じで、双方共に防疫体制の水準設定に失敗したためであり、韓国については昨年2月からその危険を筆者は指摘してきています。豪州は、今年の総選挙に向けてワクチン一本足打法へ転換したところへο株Surgeが襲来し、「豪州要塞」はウイルスによって完全に陥落してしまいました。  本邦と韓国をグラフに載せていますが、比較すると本邦はピークアウトしつつありますが、検査が飽和しきっており統計がサチって居る(飽和している)ことがよく分かります。  韓国も遂に検査飽和が始まっていますが、本邦に比してずっと軽度であり、「数え落とし」は、本邦に比すればずっと少ないと考えられます。  筆者は、本邦の真の感染者数を統計の10〜25倍程度、合衆国を5〜8倍程度、英国を3〜5倍程度、欧州諸国平均を4〜6倍程度と評価していますので、推定される真の感染者数を比較すると本邦は、英米欧諸国の中でも最も状態の悪い国の集団に入ります。これは韓国も同様で、両国共に謎々効果が崩壊したのですが、より深刻なのは一月以上にわたって継続して統計が飽和し続けている本邦です。  本邦は、遂に謎々効果を失い、米欧並みの感染率となっているため、統計での実績から米欧の1/5〜1/3程度しかないCOVID-19病床容量では、ウイルスにより鎧袖一触となり医療は破綻します。死亡数の伸びも従前より遙かに速く、死亡統計の遅延日数からまだ極大期は3月と考えられますので桁違いの死者が出ることになります。実際、12月以降の第6波による死亡者数は既に累計で約3500人と第5波での厚労省集計の死亡者数を超えています。  筆者は、今後も統計の分析と評価、予測を続けますが、正直なところ今回、明るい見込みを書きたかったのですが、とてもそうではないため気分が沈んでいます。3月いっぱいでなんとかして本格的減衰に転じさせないと、ο株の下位分類変異株であるBA.2による第6波エピデミックSurge第3陣*が3月中にも発生しかねず、それを神頼みでなく大規模な介入で阻止せねばならないかもしれません。 <*第6波は11月から12月のδ株による第1陣、12月中旬以降のο株による第2陣によって構成されている。この様にSurgeの途中でドミナント (主たる)株が入れ替わることは、第3波、第4波で生じている。現在市中感染が確認されているBA.2がSurgeを起こせば第6波第3陣となる。それはなんとしてでも阻止せねばならないと筆者は考えている> 文/牧田寛
まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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