更新日:2022年03月06日 16:57
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オミクロン株は「ピークアウト」? 一方で統計で明らかになる「謎々効果」の消失

いまだ収束は見込めそうもない東京都

 次は東京都です。
東京都における検査数(橙点 ppm)、日毎新規感染者数(青点ppm)と日毎死亡者数(黄点ppm)、検査充実率(黒点 片対数 左軸) の推移2021/11/01〜2022/02/19

東京都における検査数(橙点 ppm)、日毎新規感染者数(青点ppm)と日毎死亡者数(黄点ppm)、検査充実率(黒点 片対数 左軸) の推移2021/11/01〜2022/02/19(NHK及び東京都集計・統計処理と作図は牧田による)

 東京都は、特徴的なグラフを描いています。日毎のPCR検査数と日毎新規感染者数が2月に入った頃から同数となり、検査充実率が1前後(検査陽性率100%前後)を続けています。東京都は抗原検査数も集計しており、筆者はこれも分析していますが、抗原検査数について重複を無視して単純加算しても精々1.5倍の検査数になる程度で、東京都の検査・医療態勢は大阪府より遙かに深刻であると思われます。但し、病床数などでは大阪より体力がありますし、第6波は大阪が激化する順番*ですので破綻した検査態勢でも辛うじて社会はなり立っているのだと考えられます。 <*本邦では、第3波以降観測上、東→西→東→西の順でSurgeが激化している。筆者が昨年9月以降、西日本を特に警戒して統計追跡してきたのは、この経験則による。筆者は、感染者の自然獲得免疫と多さと半年程度でそれが減衰するためではないかと考えている。既感染者が時間をおいてワクチン接種すると抗体免疫持続期間が大きく延びるため、追加接種計画に重要な要素と考えている>  東京都は、2月14日に日毎神域感染者数のデッドクロスがあらわれましたので、本来はその後減衰基調になるはずなのですが、減衰速度がたいへんにゆっくりとしたままで、いつでも反転増加してしまう状態にあります。  仮に反転増加しなくても日毎新規感染者数一週間変化率が-10%前後しかありませんので、半減期は2ヶ月近くとなり、収束は見込めません。  現在、47都道府県全てで著しい検査飽和・統計飽和が2カ月目の継続となっており、出てきた統計値をそのまま「数え落とし」を考慮せずに真の数値として扱っても現実と全く異なる誤った分析となります。本邦に存在する「予測」が片っ端から駄目なのはその為です。  筆者は、検査充実率により統計の飽和の程度を監視しながら統計の評価を行っていますが、現状では、直近の数値の相対的変化から動向を推測するしか出来ません。  その結果、2月に入り中四国九州から順次「ピークアウト」が始まっているとまでは評価出来ますが、その後下げ止まり、反転増加が多くの都道府県で始まっており、第5波までと第6波では明らかに挙動が異なります

全国

 次に日本全体の統計を見ます。
全国における検査数(橙点 ppm)、日毎新規感染者数(青点ppm)と日毎死亡者数(黄点ppm)、検査充実率(黒点 片対数 左軸) の推移2021/11/01〜2022/02/19

全国における検査数(橙点 ppm)、日毎新規感染者数(青点ppm)と日毎死亡者数(黄点ppm)、検査充実率(黒点 片対数 左軸) の推移2021/11/01〜2022/02/19(NHK及び厚労省集計・統計処理と作図は牧田による)

 日本全国の統計も1月12日にはPCR検査充実率が10を割り込み、検査飽和が継続しています。その後1月下旬以降は統計が飽和しています。そうであっても直近相対値の分析をすると2月14日にデッドクロスが出現し、長期減衰傾向に転じたのですが、その後2月19日までに減衰が止まりつつあり、反転増加、ゴールデンクロスが強く懸念される状況にあります。  第6波死亡者数は既に3500人に近く、過去最大の死亡者数になることは確実と言えます。  筆者は今回、中四国九州沖縄でピークアウトが見られ、その傾向が東に向かって拡大していることからうれしい報告が出来ると考えて執筆をはじめましたが、アレヨアレヨという間に下げ止まり、それどころか反転増加が広がりつつあるのが実態で、景気の悪い話になってしまいました。
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アジア地域を守っていた「謎々効果」の消失
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まきた ひろし●Twitter ID:@BB45_Colorado。著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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