更新日:2022年03月13日 09:26
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岸田首相が避けた入管法改正案の再提出。無法だらけの“日本の入管問題”を終わらせる絶好の機会

誰も注目していなかった問題に、いち早く取り組んでいたジャーナリスト

メルバンさん

メルバンさんのことがマスコミに大きく取り上げられ、多くの人が入管問題を知ることとなった(写真提供/志葉玲)

 そんな状態にあっても、大手メディアの記者たちのほとんどは入管に見向きもしなかった。そんな中で、フリージャーナリストの志葉玲さんはいち早く入管に足を運び、当事者の取材にかかっていた。  6歳の時にトルコから日本に来て、22歳になった時に収容されてしまったトルコ国籍クルド人のメルバン・ドゥールスンさんに面会して、志葉さんは親身に記事を書き続けていた。しだいにメルバンさんのことが話題となり、大手のメディアもメルバンさんを取材するために、ようやく動き出した。  しかしメルバンさんは注目されても、その影にはメディアに目を向けられなかった被収容者とその家族たちがいた。志葉さんはそんな人たちにも声をかけ、悲痛な訴えに対して取材を続けた。そうした努力のもと、新しい支援団体も次々に台頭してきて、この問題は少しずつではあるが広がっていくこととなった。  2021年3月6日、名古屋入管で起きたスリランカ人留学生、ウィシュマ・サンダマリさん(享年33歳)の死亡事件は世間に大きな衝撃を与えた。法務省と入管庁による被収容者の虐待が明るみになり、テレビ番組でも連日取り上げられた。今やこの問題を知らない人は少なくなってきた。

それでもまだ、誰にも知られず苦しんでいる被収容者たちがいる

志葉さんマンガ 残念ながら、それでも入管の環境は依然として改善されることはない。まだ、今にも命を落としかねない状態の人たちが収容されている。  東京入管に収容されているスリランカ人ジャヤンタさんもその一人だ。1年以上の収容生活の末、やっと2021年末に仮放免されたものの、わずか2週間後に再収容されてしまった。  ジャヤンタさんは、最初の収容中に2度もコロナに感染してしまい、さらに職員から集団暴力を受けたストレスで食事をとることができない。食事をしても吐いてしまうので、点滴を打たないと危険な状態になっている。しかし、点滴の針の打ち過ぎで腕の皮膚が固くなり、打つのが難しくなっているという。  入管の医師も、これ以上の点滴を行うことに懸念を示している。「これは収容が原因で、今のままでは危険だ」と職員に伝えているという。それでも、いつまでも解放される様子はない。いつ命を落としてもおかしくない状態にあるのだ。  長崎にある大村入管でも、ネパール人男性が現在、寝たきりの状態となっている。2019年4月にフリータイム中のサッカーで人とぶつかって怪我をしたが、適切な治療をしてもらえなかったという。2020年8月、外部の病院で「大腿骨頭壊死症」と診断されたが、痛み止めを処方されただけの処置で症状が悪化し、排尿障害を併発した。  その後、背中などに激しい痛みを訴え、ついには歩けなくなって寝たきり状態となってしまった。支援者との面会にはストレッチャーで運ばれてくるという異様な状況だ。直すためには「手術が必要」と言われているが、入管は一向に対処しようとしない。
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今こそ、入管問題を終わらせる絶好の機会
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おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

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