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「俺の演技はビザールギターみたいなもん。本業はあくまで音楽」トータス松本が語る仕事の流儀

地震のときと違って、悔しいという気持ちが湧いてきた

──では、今回のアルバムに入っている新曲「タタカエブリバディ」を書いたときのことについて、教えていただけますか。  これはねえ、コロナ禍が始まった頃に、最初の緊急事態宣言が出て。そのときは朝ドラ撮ってたんよ。クランクインして、ものの3、4日ぐらいで、撮影が止まってもうて。で、一回東京に帰ってくれ、っていう話になったんよ。  それで、志村(けん)さんが亡くなるし、クドカン(宮藤官九郎)さんも陽性になったりして。コロナが何なんかまだわけわからんしさあ、怖いなあ、っていうので……。仕事の予定もないし、どうなんねやろ? っていう中で、なんか、曲でも作らなやってられんわと思って、作ったんよね。2020年の4月に3人でリモートで作って、映像も撮って、5月に入って早々にYouTubeにアップしたから。 ──その当時はコロナで混乱して、曲が作れなくなった人の方が多かった記憶がありますが、なぜ早々に曲作りをできたのでしょうか。  いや、俺、東日本大震災の時は、そうやったんや。これはもうなんも俺らやることないな、生きていく上で音楽なんか何も必要ないわ、と思った。でもなんか今回はね、そうでもなかったね。  朝ドラの撮影が止まって、いきなり「はい撮影中止、再開はめどが立たない、みんなもう仕事はやめ」みたいな感じになって。みんなすごい落ち込んでさ。子役の子とか、めちゃくちゃ意気込んで来てたのに。俺なんかもやっぱり「ええっ!?」ってなってんけど、地震のときと違って、悔しいという気持ちが湧いてきて。「これはなんか発信したいな」っていう感じになったんよね。

「戦いたい、じっとしてられへん」気持ち

──比喩ではなく「コロナ」という言葉を歌詞に入れつつ、明るくコミカルな曲なんだけど、ちょけすぎてはいない、絶妙なバランスの曲ですよね。  まあ、作り始めたときに、コロナのことを歌おうという気持ちがどっかにあったんや、とは思うんよね。この鬱屈した感じを……コロナと戦うのか、今の社会と戦うのか、なんかわからんけども、戦いたい、じっとしてられへん。その気持ちを歌うときには、コロナっていうキーワードはあるやん、頭のどっかに。  どう歌おうかっていうのは、考えてなかってんけど、なんとなくああいうふうにやったら、ちょっとちょけてるし、けどメッセージにもなってるし、みたいな。……うーん……でもね、こういうの、計算じゃないのよね。やっぱり、思いついてああいうふうにした、としか言いようがないんよ。もしかしたら、レッチリ(Red Hot Chili Peppers)から怒られるかもしれんしね(笑)。 ──そのちょけている部分が、レッチリの「Give It Away」から引用になっていますよね。  「おいおまえ、パクんなよ」みたいに怒られるかもね。でも、これしか思いつけへんかったから、これをやりましたっていうだけで。そのころはちょうど家のなかで仕事の環境を整えてて、自分でドラムの練習をしたり、ベースの練習をしたり、ほかの楽器の練習をして、自分の音楽を、もっと豊かにしたかった時期やったから。  ちょうどタイミングもよかったんよね。で、もう自分がドラム叩いて録音しちゃえ、みたいな。多重録音していって、形になったから、マネージャーに聴いてもらって。「これどう思う? YouTubeに上げられへんかな」みたいな。 ──そういう点では、ベテランなのにフットワークが軽いというか、霜降り明星の粗品さんが、「借金大王」の替え歌をYouTubeアップしたときもすぐ反応して、そのアンサーソングの動画をSNSに上げていましたよね。
 ははは、そうそう。いや、もっとやりたいねんけど、抑えてんのよ(笑)。調子に乗ってるように思われるの、イヤやなと思って。だって話題になるやん、すぐ。『ダウンタウンDX』で、粗品さんが「こんなことがあったんですよ」ってしゃべって、その映像が地上波で流れたりして。みんなが「うわあ」とか言うてんのを見たら、「いや、そういうのを狙ったわけじゃないから!」みたいになって。だから、ちょっと控えてんのよね。
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つくづく思う、ほんまに運が良かったんやな、と
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セルフカバーアルバム『ズ盤』
2022年3月23日発売
収録内容

【CD】
・ガッツだぜ!! V
・借金大王 V
・歌 V
・愛してる V
・あそぼう V
・年齢不詳の妙な女 V
・相愛 V
・僕の人生の今は何章目ぐらいだろう V
・タタカエブリバディ
・ええねん V
【初回限定盤Blu-ray/DVD】
・ウルフルズ30周年プレ・イヤー 2021-2022お宝探しの旅
・フル盤 ザ・ムービー『稲川淳二のフルえる話』 ディレクターズカットver.
・「タタカエブリバディ (demo ver.)」 映像

30周年記念ライブ「“ウルフルズ 30th Anniversary Special Live”OSAKAウルフルカーニバル ウルフルズがやって来る!ヤッサ!やります!30曲 V」が開催

2022年5月21日(土)大阪府 万博記念公園もみじ川芝生広場

週刊SPA!3/22・29合併号(3/15発売)

表紙の人/ トータス松本

電子雑誌版も発売中!
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