ニュース

ブチャ虐殺を「フェイク」と主張するロシア、突きつけられる被害の現実

―[今週の顔]―

300人近くの民間人が殺害されたと言われるブチャ

 後ろ手に縛られて頭を撃ち抜かれた遺体に、地下室に横たわる子どもの遺体――ウクライナの首都キーウ近郊、ブチャの惨劇が世界に衝撃を与えている。現地取材中の香港人ジャーナリストのクレ・カオル氏が話す。
ブチャ虐殺

300人近くの民間人が殺害されたと言われるブチャ。ロシア軍の撤退直後には路上に多くの遺体が横たわっている映像が拡散。性的暴行を受けた後、殺された女性の遺体も…… 写真/Kaoru Ng

「私がブチャに入った4月5日には、ボランティアによって遺体が埋葬地に移送されていましたが、いまだ多くの遺体が大きな穴に保管された状態で独特のにおいが充満していました。  埋葬済みの遺体も一部は土から手が飛び出ていた。性的暴行を加えられた少女や、ロシア軍に見つかるまいと長期間身を潜めていたせいか餓死した女性もいたようです。ロシアは『フェイクだ』と虐殺行為を否定していますが、これは間違いなく現実。あのひどすぎる光景は忘れようにも忘れられない……」

虐殺行為は今回に限ったことではない

 実は、ロシア軍による虐殺行為は今回に限ったことではない。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が話す。 「第一次チェチェン紛争では2万5000人の民間人が殺害され、シリア内戦でも無数の民間人がロシア軍によって殺されました。今回ブチャで虐殺行為に関わったのはFSB(ロシア連邦保安局)と第64独立自動車化狙撃旅団とされていますが、彼らにとって拷問は当たり前。ベラルーシから入り、キーウ侵攻を目指すなかで伸びきった補給路がウクライナ軍の攻撃で絶たれたため、敵に対する恐怖心もあって民間人虐殺に手を染めたと想像できる」  国連総会は4月7日に人権理事会からのロシア追放を決定。各国が追加制裁も決めたが、黒井氏は「さらなるロシアの凶行は避けられない」と話す。 「ウクライナ東部の制圧に注力すると言われているが、軍事侵攻がうまく進まなくなるほど、民間人を殺めて恐怖で支配しようとするでしょう」  カオル氏によると「ロシア軍は遺体に爆弾を仕掛けて撤退したと言われており、そのせいで詳細な被害の解明に時間がかかっている」という。なぜ、そうまでして無辜の民を殺したのか……? ロシアの戦争責任は免れない。 ======
次のページ
ブチャよりも多くの民間人が殺された…
1
2
週刊SPA!4/19・26合併号(4/12発売)

表紙の人/ 山本舞香

電子雑誌版も発売中!
詳細・購入はこちらから
※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める!
おすすめ記事
ハッシュタグ