レジ袋有料化は義務ではない。単なる「強い推奨」にすぎなかった、政府が答弁
今年1月、東証2部上場のレジ袋メーカーの大手「スーパーバッグ」が、24日から希望退職者の募集を始めると発表した。2020年7月より実施されたレジ袋の有料化にともなう経営が悪化が大きな要因となったようだ。しかし、憲政史研究家の倉山満氏によれば「そもそも、レジ袋有料化は義務ではなかった」のだという。一体どういうことだろうかーー?(以下、倉山満氏による寄稿)
2020年7月1日よりレジ袋有料義務化! 当時の小泉進次郎環境大臣が大々的にキャンペーンしたのを、多くの方が覚えているだろう。
事実、コンビニその他ほとんどの店で、「レジ袋有料ですけど、いりますか?」と聞かれるようになった。ただし、一部のお店では今まで通り無料配布してくれる。不思議に思った方も少なくないだろう。
そして一部の店では、「我々は環境に配慮したレジ袋を売っています!」と、大々的に宣伝している。
しかし、「レジ袋有料化は義務ではなかった」と聞くと驚かれるだろうか。先日の国会で、政府がそれを認め、正しく広報すると答弁したので、ここに一部始終をお伝えする。
そもそもである。レジ袋有料義務化は、何度も試みられてきた。しかし、政府で審議するたびに「憲法違反の疑義がある!」と指摘され、断念されていた。
日本国憲法第二十二条
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
この条文の中には「営業の自由」も含まれるとの解釈が確立されている。「レジ袋を無料で配布するな! 有料で売れ!」と政府が命令することは憲法違反。それを法律にすることも憲法違反。長年の解釈だった。
ところが、環境省は他の官庁(特に経済産業省)を巻き込み、省令で押し通した。省令とは、法律の下の政令の下の、格下の命令である。政令は内閣が決める命令だが、省令は一つの官庁だけでも出せる命令だ。
なぜ法律でやると憲法違反になることが、省令で可能なのか。その理由をしらべてみようと、私が理事長兼所長を務める救国シンクタンク(一般社団法人である)で「アクティビストのための調査手法のモデル化」(レジ袋研究会)という委託研究を立ち上げた。担当は早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉理事、委託者はラジオ番組で毎週のようにこの問題を取り上げている郵便学者の内藤陽介先生、調査には浜田聡参議院議員のご協力で政府民間問わず、幅広くヒアリングを行えた。
さて、最も肝心の法令の組み立てである。容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(いわゆる容器包装リサイクル法)で、罰則規定を定める。
ざっくり言うと、
「プラスチックを減らそう!」
「大臣は、その基準を定めることができる!」
「役所が指導、助言をしても、取り組みが著しく不十分と認めるときは容器包装多量利用事業者に対して勧告する。それでも言うことを聞かねば、その業者の名前を公表。それでも聞かねば命令を出す。それでも聞かねば、罰金を科す」
という組み立てになっている。
そして法律を執行する為の省令で「レジ袋を無料で配布してはいけない!」と定めた。レジ袋はプラスチックなので、環境には悪いので無料配布してはならない。ただし、例外規定があって、環境に悪くないレジ袋は無料配布して良い。たとえば、分厚くて再利用できるもの、紙でできているもの、海に捨ててもそのまま綺麗に分解されるもの。
レジ袋有料化は義務ではなかった
長年、レジ袋有料義務化は憲法違反だとされてきた
なぜ法律でやると憲法違反になることが、省令で可能なのか
1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中
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