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レジ袋の有料化は義務ではなかった。政府の言いなりになる危険さ/倉山満

レジ袋の有料化は、“強く推奨”されただけ。義務ではない

言論ストロングスタイル

2020年7月1日のレジ袋有料化を周知する店内掲示用ポスター。このポスターを見れば、誰もが有料化は義務化したのだと理解することだろう 写真/時事通信社

 多くの人々が「騙された」との気持ちになるのではなかろうか。「レジ袋有料化は義務ではなかった」と聞かされれば。  4月20日の『日刊SPA!』で「レジ袋有料化は義務ではない。単なる『強い推奨』にすぎなかった、政府が答弁」という記事を配信したら、反響が大きい。  ’20年7月1日から「レジ袋有料義務化」と大々的に宣伝された。多くの人が「環境問題だから仕方がない」と協力した。  レジ袋有料義務化は、過去に何度も法制化しようとしたが、「憲法違反の疑義がある」との意見が出され、断念してきた。憲法22条「営業の自由」に抵触するからだ。  ところが、法律どころか内閣の出す政令ですらなく、一つの省が出せる省令で「レジ袋有料義務化」がなされた。なぜ法律で不可能なことが省令で可能なのか。

なぜ法律で不可能だった「レジ袋有料義務化」が省令で可能なのか

 その理由を調べようと、私が理事長兼所長を務める救国シンクタンクで、委託研究を立ち上げて調査した。担当は早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉理事、委託者はラジオ番組でこの問題を毎週のように取り上げている郵便学者の内藤陽介先生。調査には浜田聡参議院議員の協力で、官民問わず幅広くヒアリングを行えた。  官僚が国民に命令を出すには法律に根拠が必要である。その根拠法が「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(いわゆる容器包装リサイクル法)で、ここに罰則規定が定められている。  大臣はプラスチックを減らすための基準を定めることができる。プラスチックを減らす努力が著しく足りない業者に対しては、「指導、助言、勧告、名前の公表、命令、罰金」という段階を踏んだ手続きを行うことができる。  最終的に罰金がとんでくるのだが、「著しい」か否かは、役所の匙加減一つだ。  この法律を施行する為の省令で、環境省は経産省を巻き込んで「レジ袋を無料で配布してはならない」との省令を定めた。ただし例外があり、環境に悪くないレジ袋は無料配布をしても良いとした。

「有料化が義務化されたというふうに聞こえてしまったのかもしれません」

 この過程で、①環境保護という公共の福祉が目的であること、②「指導~罰金」の慎重な手続きを踏んでいること、③例外規定があることの三つが憲法違反ではない理由とされた。つまり、すべてのレジ袋の有料化は義務ではないのだ。  この点を、4月8日衆議院経済産業委員会で、日本維新の会の漆間譲司衆議院議員が糺した。要するに、レジ袋有料化は義務なのか義務ではないのか。  これに対する経産省局長の答弁は「単純に言えば実質的には義務化ということでございますけれども、法令上はですね、命令に従うことが義務だというようなことでございます」だった。  これを受けて大岡敏孝環境副大臣は「確かに、私どもの言い方が十分でなかった面があるかもしれません。すべてのレジ袋を有料化するっていうふうに有料化が義務化されたというふうに聞こえてしまったのかもしれません」「これから私たちもしっかりと正しく正しく説明するように心がけてまいります」と率直な答弁を行った。
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法的な強制力もない「お願い」のはずなのに
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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