競輪場に飛び交う“野次”はレースをよりアツくさせる極上スパイスだ!
競輪場は、さまざまなヤジが飛び交っている
写真/セールス森田
公営レースをネット投票ではなく現場で楽しむ醍醐味と言えば、もちろん目の前で繰り広げられる大迫力なレース。そして、それぞれの場でしか味わえないご当地グルメなどが思い浮かぶが、忘れちゃいけないのが「声援」である。お気に入り選手への応援はもちろん、買った選手が負けた時の野次、はたまた思わず笑ってしまうオモシロ声援など、競輪場に飛び交う声はさまざまだ。これらファンの声がよりレースを盛り上げる一因であるのは間違いないだろう。
では、実際に走っている選手たちはそんなファンからの叱咤激励の数々をどう感じているのだろうか。そこで今回は現役の競輪選手である原野隆選手(東京所属)に話を聞いた。
――競輪は競艇やオートレースと違ってエンジン音がないので声援が届きやすそうですが、走っている時もファンの声は聞こえているんですか?
原野:周回中でも聞こえていますよ。特にお客さんが少ないコーナー周辺からならよく聞こえます。でも、スタートラインの前が金網の場なら発走機についた時に飛び交う声も全て聞こえるんですが、アクリル板の場だと全く聞こえません。なので、アクリル板の場で発走機にいる選手に声援を送りたいなら、少しズレて離れた位置から声を上げたほうがより効果的です。
――なかには酷い野次もありますよね?
原野:もちろん酷い野次もあるけど、公営レースに野次は付き物なので……。負けた時に買ってくれている人に野次られるのはもちろんですが、勝った時も買ってない人から野次られますから。だから「野次をもらっているうちが華」ってことですよ。だって、野次すらないってことは全く興味がない、圏外ってことですからね。だからミッドナイトだと無観客だから少し寂しいです。なんか静かだな~って思っちゃいます。
声援といえどもその内容はさまざま。応援や野次以外にも「その話、どこで入手したんだよ!」と思わず突っ込みを入れたくなるマニアックな声援に選手自身が感心してしまうこともあるそうだ。ただ、たまに微妙に間違った情報が混じり、選手たちが困惑することも……。
――印象に残っている声援ってありますか?
原野:「なんで知ってるの?」って思う声援は印象に残りますよね。「原野、おまえ立川で飲み歩いてるらしいじゃねーか、ばかろう!」って。なんでバレてるんだよって(笑)。
特にビックリしたのが、もう15年くらい前の話だけど、先輩がモンゴルに新婚旅行に行った後の開催で俺も出てたんですが、お客さんの1人が「◯◯(先輩の名前)、お前がんばれよ!」って声援を送ったら、別のお客さんが
「◯◯はダメだよ。新婚旅行でモンゴルに行ってお腹壊しちゃったから」って。なんで、そんなことまで知ってるのか、と不思議で仕方がなかったです。
――今ではSNSでプライベートなことを発信する現役選手もいますけど、その時代にはないですもんね。
原野:いるんですよね~、ものすごい情報通が。離婚したばかりのこと知ってて「あいつは養育費がかかるから今日はやるぞ」とか、「あいつ今日は子供の誕生日だからがんばるんじゃね?」とか。
俺も言われたことがあって「原野、お前は銀座のボンボンだから今日はやんねーよな」って。いやウチ、銀座じゃなくて表参道なんだけど……。ちょっと間違ってるけど、よく知ってるな~って。それを聞いていた他の選手が「原野、お前の実家って銀座なの?」って驚いてましたよ(笑)。
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。
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