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106億円溶かした大王製紙元会長、再びカジノで“億”勝負「出所後、ギャンブルの疼きが蘇った」

カジノで人生を狂わせた男、再び

インタビュー時には終始、柔和な笑顔を見せる井川氏

「借りる。負ける。さらに借りる。さらに大きく負ける」――。カジノでの負けを埋めるため、子会社から総額106億8000万円の資金を借り入れ、2011年に会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕された元大王製紙会長の井川意高氏。2017年10月に懲役4年の刑期を満了しシャバに出た同氏が、この6月に『熔ける 再び そして会社も失った』(幻冬舎)を出版した。なにが、地位や名誉、有り余るカネさえも持っていた彼を狂わせたのか? 本人を直撃した。 ――2013年、刑務所に収監された直後に出版した『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(双葉社)は、累計15万部を超えるベストセラーとなりました。この著書には、井川さんの半世と、人生を狂わせたカジノについて描かれていました。タイトルにもあるようにまさに「懺悔録」だったわけですが、続編となる今回の『熔ける 再び そして会社も失った』では、懲りずにカジノに繰り出していたことを告白していますね。この本で井川さんが伝えたかったことはどんなことなのでしょうか? 井川意高(以下、井川):私が犯してしまった10年前の愚かな罪では、従業員や株主、そして家族に大きな迷惑をかけてしまいました。ただ、誤解を恐れずに言えば、持ち株を売却することで借り入れた資金を全額返済し、さらに4年の刑期を終えたことで“形式的”には従業員や株主に対してケジメをつけたのではないかと思っています。しかし、家族に対してはあまりにも暗い“黒歴史”を残してしまったままです。 3年前に他界した父の遺品を整理していると、大量のメモや走り書きが見つかりました。そこには、ある人物による井川家排除のクーデター劇に対する怒りや無念が記されていたのです。男らしく普段は無口だった父の胸の内を知り、父の無念や生き様を活字に残すことで、少しでも家族に対する心のサポートができればと思ったわけです。

「私の戦いは、まだ決して終わっていない」

――カジノについても聞かせてください。「鬼の特捜」に逮捕されても、ギャンブルはやめられなかったのでしょうか? 井川:不思議なもので、刑務所では「カジノをやりたい」という気持ちはまったくありませんでした。それどころか、「酒を飲みたい」という気持ちすら起こらなかった。ギャンブル依存症であり、アルコール依存症でもあると診断された私がですよ(笑)。それがシャバに戻ると、勝負師としての疼きが蘇ってきたのです。そして、いつしか「私の戦いは、まだ決して終わっていない」と考えるようになっていましたね。 ――刑期満了後にはシンガポールやマカオから主戦場を移し、韓国の首都ソウルでカジノのリベンジが始まったんですよね。 井川:はい。私がプレイするのは、バカラというトランプを使ったゲームです。バカラはポーカーやブラックジャックといった確率のゲームとは異なり、「運の揺らぎ」を見極めながら「プレイヤー」が勝つか「バンカー」が勝つかのどちらかに一点張りするゲーム。当たれば手持ちのチップは2倍に増えるという単純な丁半バクチですが、「脳髄が痺れる」というんでしょうか、このヒリつくスリルはこれまでバカラでしか体験したことがありません。 しかも、スタートから勝ち続けるというのはつまらないもので、手持ちのチップを極端に減らし、崖っぷちまで追い詰められてからの“捲り”がたまらないのです。

刑務所の中から買った10台以上のフェラーリは、カジノで負けが込んだときにすべて売却し、バカラの種銭となっていった…

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ソウルで3000万円が9億円に!
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熔ける 再び そして会社も失った

懲役4年の刑期満了後に、再びカジノへ

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