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キリンが独自素材を日本コカ・コーラに提供。「敵に塩を送る」狙いとは

森永製菓、カンロ…他メーカーに提供している「プラズマ乳酸菌」

コカ・コーラ そして、この「プラズマ乳酸菌」は実は他社と提携した商品販売に意欲的です。  すでに、キリンは森永製菓、カンロ、大正製薬などに「プラズマ乳酸菌」を提供しています。森永製菓の「inのど飴<りんご味>」や「健康のど飴たたかうプラズマ乳酸菌iMUSE」などは販売も開始されています。その他、ファンケルの流通営業とも連携することで、通販チャネルにおいて新規顧客の獲得と定期顧客化が好調です。  そしてこの提携が同社の売上を後押ししているのです。2020年の関連商品の売上は100億を超え、さらに2027年までに500億円まで伸びると予測しています。  現段階で他社への提供の経験があり、売上にも貢献しているという土台が「プラズマ乳酸菌」にはあります。  しかし、コカ・コーラへの提供はこれまでとは全く違う意味を持ち、同列で語ることはできません。コカ・コーラは完全に同業のため、例えばコカ・コーラが「プラズマ乳酸菌」を活用した飲料水を販売して、キリンの売上を奪う可能性も十分に考えられます。  こういった懸念がある上で、なぜコカ・コーラに「プラズマ乳酸菌」を提供するのか。その理由はリスクを上回るリターンを見込んでの判断があります。

キリンがほしいのは認知度

 キリンが見込んでいるリターンは認知度の向上です。  コカ・コーラは清涼飲料市場において第1位のシェアを持ちます。つまりキリンの商品よりもコカ・コーラ商品の方が、多くの人が目にし手に取る機会があるということです。このコカ・コーラのブランド力を利用することで「プラズマ乳酸菌」の認知度を向上させることこそがキリンの狙いです。  実際にキリングループの2022年-2024年中期経営計画において、日本国内のプラズマ乳酸菌機能認知率の45%達成が非財務目標として掲げられています。さらに、この数値は2027年までに50%達成を目標としています。  機能認知率とは、名称を知っているだけでなく効果や効能までを把握している割合です。つまり、キリンは「プラズマ乳酸菌」とはどういったもので、どのようなメリットがあるのかを2027年までに2人に1人が知っている状態をつくろうとしているのです。  健康食品の分野では、どういった効能があるのかがわからない商品、信ぴょう性が高くない商品を購入したいと思う人は決して多くはありません。  スピード感を持った認知度向上が健康食品素材を軌道に乗せるためには非常に重要な要素となります。
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2024年までに「認知度15%アップ」が目標
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経済アナリスト/一般社団法人 日本金融経済研究所・代表理事。(株)フィスコのシニアアナリストとして日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでベンチャー業界のアナリスト業務を担う。著書『5万円からでも始められる 黒字転換2倍株で勝つ投資術』Twitter@marikomabuchi

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