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「スカーフの着用が正しくない」で逮捕、撲殺!? 在日イラン人たちが大規模デモ

渋谷駅前でもイラン人による大規模なデモ

10月1日、渋谷駅前でイラン人たちによる集会と抗議行動が行われた

10月1日、渋谷駅前でイラン人たちによる集会と抗議行動が行われた

 10月1日、渋谷駅前にイラン人たちが全国から約300人集まり、抗議行動が行われた。女性たちの参加も多く、デモに賛同する日本人の参加者も見られた。  デモに参加した50歳代のイラン人男性は「43年の間、私たちイラン人はまるで刑務所にいるような暮らしだった。43年前はもっと自由だった。その頃に戻ってほしい」と語った。  17歳までイランで暮らしていて、現在ベルギー国籍を持つ女性(27歳)は、「ヘジャブの着用義務はとても大変だった。学校へ行くにも、夏は40℃まで暑さが増すので辛かった。いつもモラリティ・ポリスが見張っている。目の前で逮捕される人も見たことがある。イランへ戻る気はもうありません」。  日本生まれのイラン人女性(28歳)はこう訴える。 「アミニさんの件は今回が初めてではない。私のいとこもヘジャブの件でいちゃもんをつけられて、顔をボコボコにされた。今、彼女は国外で暮らしている。イラン革命の前に戻ってほしい。女性も男性も自由の立場になってほしい。日本人にも関心を持ってほしい。日本だって、いつこういうことになるかわからないのだから」 「パーレビ政権の頃に戻ってほしい」と言う声は圧倒的に多く、今アメリカで暮らしているムハンマド・レザの息子、クロシュ・レザの写真を掲げ、「彼こそイランのシャー(国王)になってほしい」と望む人もいる。  そのほか、イスラム教自体を批判し「新しいリベラルな共和国にしたい」という意見の人もいる。考えが違っても、みな現在の政権を非難するということで一致団結して集まっているのだ。

世界中で、イランの政権に反対するデモが行われている

難民申請中のSさん。イランにいる兄弟に危害が及ぶことを心配して、マスク姿で取材を受ける

難民申請中のSさん。イランにいる兄弟に危害が及ぶことを心配して、マスク姿で取材を受ける

 参加者の多くは、日本で安定した在留資格を持っている。しかし、中には難民申請中で在留資格のない人もいた。  千葉県から来た男性Sさん(53歳)は仮放免の立場なので、東京にあるイラン大使館に行くために、その日の朝に東京入管へ出向き、「一時旅行許可」を取ってからイラン大使館のデモに参加した。無断で自分の住む県から出たのがバレれば、入管に収容されてしまうからである。 「自分にはこれくらいのことしかできないから、せめてデモに参加したいと思いました。イランは厳しすぎます。特に女性には自由がない。厳しすぎて、これは差別だと思います。イランは石油も採れるし決して貧乏な国ではないはずなのに、市民は貧しくて生活は苦しい。本当に変わってほしいと思います」  同じく、難民申請中で都内在住のベヘザードさん(44歳)にも話を聞いてみた。 「私の望みは、国民投票をしてほしい。今度こそ国民が選ぶ政府に変えたい。今の政府はもういりません。今日も、世界中のイラン人がイラン政権に反対するデモを行っています。『今の政権はいらない』という気持ちを共通点に、イラン人たちがひとつになりました。こんなことは、私が知る限りでは初めてです。  私たちの声を聞いて、いろいろな国の人たちが応援してくれています。すぐには変わらなくても、いつかは変わることができると思います。希望は持っています。私はイランの厳しいイスラムの戒律が嫌で、キリスト教徒になりました。でも改宗はイランでは認められていなくて、その罪は死刑に値するので帰ることはできません」  世界中で行われているデモに参加するイランの人々が目指すように、今の政権を変えることは本当にできるのだろうか。イラン国内では、今も多くの市民の血が流れている。それを終わらせるために、多くのメディア、世界中の人たちがイランの人権問題に関心を向けることを彼らは望んでいる。 文・写真/織田朝日
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)、入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)

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